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ソフィー・マルソーの 過去から来た女のakrutmのレビュー・感想・評価

3.3
高級ホテルの支配人の失踪を捜査する警部が支配人一家の秘密を明らかにしていく様子を描いた、ソフィー・マルソーの監督第2作目となるサスペンス映画。2008年の東京・大阪フランス映画祭のオープニング作品であり、その際の日本語タイトルは原題に近い『ドーヴィルに消えた女』である。ドーヴィルはフランス北西のノルマンディー地方の高級リゾート地であり、本映画では高級ホテルや支配人一家の場所となっている。(クロード・ルルーシュ監督の名作『男と女』でもドーヴィルが舞台として印象的に使われている。)ドーヴィルと対照的に、警部が住んでいるのはドーヴィルの対岸にあるル・アーブルという庶民的な港町。そして、映画の中で何度も映される橋が、両岸を結ぶノルマンディー橋である。

サスペンスとしてのストーリー・脚本は良く出来ていると思うけれど、それを映像化するのに失敗している。登場人物の関係が入り組んでいるわりにはそれらを伝えようとする工夫がなく、どちらかと言うとフィルム・ノワール的な説明を省略する手法で描いているので、かなりじっくりと見ていないと全体のストーリー構造がわからないだろう。だからと言って、フイルム・ノワール的な映像表現かというと、そこまでではない。マイクが映り込んでいるシーンを頻繁に見せられると、陳腐ささえ感じてしまう。なぜこんな映像のままにしてしまったのかが不思議でならない。

ソフィー・マルソー自身も一人二役で出演している。謎の女として出てくるときにはソフィー・マルソーと気づかないほどだったが、ラストシーンで見せる変装なしの姿はやはり美しい。主役の警部を演じたクリストファー・ランバートとは、本作での共演をきっかけに私生活でもパートナーとなる。(ソフィー・マルソーがキャスティングもしていたことを考えると、自分のタイプの俳優を主役に起用するという公私混同か?)

本作の後は、ラブコメ映画に主演するようになり、そちらに活路を見出したのか、しばらく監督として作品を製作していなかったが、2018年に『Mme. Mills, une voisine si parfaite』というコメディ映画を監督第3作目として公開した。
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