ざべす

ヤン・シュワンクマイエル短篇集のざべすのレビュー・感想・評価

3.6
空想と社会派、相反する属性を抱えるヤン・シュヴァンクマイエル監督作品。

ヤン・シュヴァンクマイエル監督は、イマジナリーフレンドからインスピレーションを得て創作に起こす監督だと思っている。
(完全なる幻想の世界ではないことに注目したい)

ここで言うイマジナリーフレンドの感覚は、
車や電車に乗るとき窓に走らせる忍者や、壁のシミが何かに見えること、ぬいぐるみや積み木とお話しすることを指す。

監督を好きだなと思う人の多くは、人間が幼少期に抱く普遍的な感覚に共感を得ているのではないだろうか?

そうして空想を描いた上で、監督はチェコが辿った歴史に憤慨と批判を起こす。
監督の作品には、監督の『子ども』と『大人』の側面が内在しているのだ。

自分は正直、子ども側面の縦横無尽に走り回る感情と情景のぶつかり合いの方が好みだ。
と言うのも、監督は理屈で物作りすると、作品が『ただの奇抜なもの』になる傾向がある気がするからだ。
監督の『余計なもの』を作る美点が、なんだか人工的に感じる。
まぁたぶん人工的に感じた分、ちゃんとチェコの歴史を理解すれば唸るように出来ているのかもしれない。

当短編映画のオムニバスは、
根源的衝動を揺さぶる作品と、社会派映画も紛れるごった煮の詰め合わせだ。
このコンセプトを合わせる気のない雑多ないい加減さは逆にちょっと好きになる。
ざべす

ざべす