てんさん

SOMEWHEREのてんさんのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
3.5
僕は”面白くない”ことがコンプレックスだった。
一発芸とか目立つ場でのいわゆる陽的な笑いを取ることが苦手で、そんな自分が大嫌いだった。

段々とどうすれば目立つ場に出ないで済むかをいちばんに考えるようになった。
自分が陽気じゃないことにはずっと前から気づいていた。
でも、ずっと見ないふりをしてきたんだと思う。

おもしろ壮でオードリーが優勝した時、どう見てもコンビの主役は春日だった。
周りの芸人は春日ばかりイジっていて、いずれ若林は消えるようにしか思えなかった。
でも若林は消えるどころか、ぐいぐいとのし上がっていった。

若林をテレビで見ていて、「そもそも剣で戦うことを諦めてるな」って思うことがよくあった。
正々堂々と剣では戦えないけど、弓で笛で時には毒を使ってあらゆる隙間からぬるっと攻めてくる。
大事なことは”笑わせる”ことであって、手段は正攻法でなくたってよかったんだなって。

思えばその時に初めて、僕は”面白くない”自分を受け入れられたんだと思う。
ずっと前から気づいてはいた。でも、この時初めて受け入れられた。

すると不思議なもので、ナナメの切り方で戦っていたら少しずつ自信がついてきて今では段々と剣でも戦えるようになってきた。
回り回って苦手なことも少しずつできるようになってきた。

なんの話をしとんねんと思うかもしれないけど…笑

つまりはこの映画もそういうことで、”空っぽで寂しい”自分にはずっと前から気づいていた。
でも、ずっとそれを受け入れられなかった。
だから何年も前に進めず、ぐるぐると同じ砂利道を高級車で彷徨っていたんじゃないか。

でも、抜けられたじゃんか。
屈託なく笑う娘に感謝だね。
最後はどこに向かったのかわからないけど、とりあえず”どこか”には行けそうじゃん。

「気づいていること」と「受け入れること」は全然意味合いが違って、「受け入れ」られれば、遠回りしたとしても元々進みたかった道に帰って来れるよ。
家族とうまく過ごせるようになる日々もきっともうすぐそこだ。
てんさん

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