「静」の部分と長いカットが多く特別何かが起こるわけでもないけれど何故か心に触れる哲学的な作品だった。
“ロスト・イン・トランスレーション”で感じたと同じ、捉えどころのない けれど観終わってみると捉えて離さないこの感じがやはり好きだ。
また随所のカットから漂う雰囲気はとても洗練されていてセンスを感じざるを得なかった。
パッケージのシーンは勿論、父娘でプールに潜るシーンは特別好き。
多感な時期真っ只中の娘と父の関係はどこかもどかしくて歯がゆくてでも愛おしくて。これ以上幼くてもこれ以上大人になってもこの雰囲気は生まれない絶妙な時期の父娘関係だった。
お互いを必要としながらどう関わったら良いのか、、どの組合せの親子関係よりも難しくて美しい気さえする。
華やかな世界で華やかなものに囲まれて傍から見れば 贅沢とも思える心の空虚さ。
高級車のエンジン音でかき消さなければ保たれない程の心の均衡はいわゆる成功者にしか分からない孤独なのだろうか。
何かを捨てなければ幸せは掴めないってこういうことなのか…
一旦立ち止まりエンジンを止めて歩いてみたならそこから見えてくる景色はきっと大きく違ったはず。娘と過ごした数日間は当たり前に一緒に過ごせる父娘よりも密度の濃い時間だったのだから。
ラストのシーンでじわじわ込み上げる感情はとても言葉では表せないものだった。