月うさぎ

アウトローの月うさぎのレビュー・感想・評価

アウトロー(2012年製作の映画)
3.8
トム・クルーズが爽やかに笑わない!
最初の数分間、事件が起こる間中、一言も言葉が無い。そして音楽を極力控えた演出。すごい。
本作以降、ミッション・インポッシブル・シリーズを一手に引き受ける事になり「トップ・ガン マーベリック」の素晴らしい脚本チームの一人でもあるクリストファー・マッカリー監督。彼が脚本も務めており、トムにこの役をオファーしたのも彼だ。

元アーミーのミリタリーポリス、ジャック・リーチャー。アメリカ海軍の父とフランス人の母の間に生まれ、世界各地の基地を転々として育った故郷を持たない軍人。
日本ではそれほどメジャーではないけれどアメリカでは大人気の小説の映画化。

正義対悪の戦いという王道の物語ではあるのだけれど、主人公が放浪者で住所も職業も無く、携帯も免許も何も持たない主義で(でも車は運転するし、必要なら盗む!)悪人を躊躇なくボコったり殺したりする。刑務所に入らないで済む程度に。清く正しいヒーローではなく、無法者。なので邦題は「アウトロー」というタイトルになっている。

白昼に起きたライフルによる無差別殺人。現場に残された証拠から容疑者はスピード逮捕されたが、自白書へのサインの代わりに書いたのは
GET JACK REACHER

上から俯瞰したり真下から仰いだり、一瞬別の映像がフラッシュしたり、映像に釘付けされる工夫があり、かと思うとライフルの照準器を覗くシーンはワンカットで音響効果もなし。犯人の息の音だけ。これは勇気のいる演出だと思う。緊張感が凄くあったけれど、何をやっているのかわからないままなので。

長めのカーチェイスも音楽は全く無し。エンジンの音。タイヤの軋む音。追突の破壊音。

ハラハラさせられるシーンは何度も出てくるのだが、トム・クルーズに弾は当たらないと思っているので、そんなに心配しないで観ていられるのがいいのか悪いのか…
おまけに、ヒロインの弁護士役がロザムンド・パイクときている。信念の人を的確に演じているが、彼女なら例え危険な目にあっても自分で何とかできそうと思ってしまうので、やはりハラハラを感じないのだ。何てこったですよ。

いい映画だったと思う。でも原作がそもそもこういう無口系のテイストなので、スカッと爽快とか、心が暖かくなるとかいうタイプの映画ではない。
トム・クルーズの映画としては良いのだけれど、確かにジャック・リーチャーをトムがやらなければならないというものでも無いかもしれない。
原作ではジャックは身長195cmの設定で、ファンから「トム・クルーズの背が低すぎる」といった手紙が、原作者チャイルドのもとに山ほど届いていたらしい。全く。アメリカ人って背の高さで人の優劣つけたがるよね。
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