ゴン吉

砂漠でサーモン・フィッシングのゴン吉のレビュー・感想・評価

4.2
砂漠の国イエメンでサーモンフィッシングする施設を作るヒューマンドラマ。
ユアン・マクレガーが主演、エミリー・ブラントがヒロインを演じ、クリスティン・スコット・トーマス、アムール・ワケド、クリスティン・スコット・トーマスらが共演。 

海兵隊がアフガニスタンのモスクを爆破する。イギリス首相広報室(クリスティン・スコット・トーマス)は海兵隊と距離を置くためにアラブとの平和なニュ-スを探していると、イエメンの大富豪シャイフ・ムハンマド(アムール・ワケド)が提案する”砂漠でサーモンフィッシングを紹介するプロジェクト”を見つける。首相広報室は釣り人口が200万人もおり首相も釣りが得意だったことこら支持票も期待してこのプロジェクトに飛びつく。首相広報室は漁業・農水省のアルフレッド・ジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)に本件を任せる。"根本的に実行不可能"と思い込んでいたジョーンズ博士は、気が進まなかったが上司命令でムハンマドの仲介人である女性コンサルタントのハリエット・チェトウォド=タルボット(エミリー・ブラント)に会いに行き、5000万ポンドの費用、中国三峡ダムの技術チームとの面談、国内の酸素会社のチーム、輸送に使う世界最大の輸送機であるロシアのアントロフ2機の手配など無理難題を吹っ掛ける。しかしハリエットはムハンマドから5000万ポンドの資金を調達し、中国三峡ダムの技術者を呼び、酸素会社の手配をしてしまう。さらに首相広報室も養殖魚ではあるが1万尾の鮭を確保する。ジョーンズ博士は仕方なくムハンマドと面会するが、イメージとは違い彼の思想・価値観に共感する。そんな折、ハリエットの軍人の恋人が戦地で行方不明となり生存が絶望視される.... 

砂漠にサーモンフィッシングができる施設を作るという荒唐無稽なプロジェクトをユーモラスに描いたハートフルヒューマンドラマ。
アメリカが海兵隊を投入してアラブの人と戦争を繰り広げているのに対して、イギリスが物騒でないイギリスとアラブ間のニュースを求めるのが対照的。
「多くの理由から私はイギリス人を尊敬しています だが彼らには謎も多い 富む者は貧しい物を恐れ 貧しい者は富む者を恐れる そして政治家たちは あえて砕けた話し方をしようとする 素晴らしい社会なんだが.... だが釣り人は違ったんです 私の肌の色も 裕福か貧乏かも 服装も気にしない 彼らにとって大事なのは 魚と川と釣りだけです 釣り人が美徳とするのは 忍耐 寛容さ そして謙虚さ そこがいい」
このイエメンの資産家の言葉が本作品のすべてを象徴している。
ある物事を通じて主義主張を超えて世界の人々が交流を深められたら素敵ですね。
イエメンの雄大な大地に比べて人間のちっぽけな考えが如何に愚かなことか。
砂漠でサーモンフィッシングできる施設を作ろうとすることはバカげているかもしれないが、戦争をすることの方が遥かに愚かである。
我々は”理想に満ちた夢想家”になりたいものだ。
本作には人として大切なものがたくさん詰まっており、胸がいっぱいです。 
温かい涙が流れるハートウォーミングな素敵な作品です。
最後のさりげない会話にもメタファーが詰まっていて奥が深いです。 
「助手?」「じゃあパートナー」「ぜひ ミス・チェトウォド=タルボット 君が必要だ」  

2024.3 テレ東で鑑賞(サタシネ・吹替:田尾友美 訳)
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