菩薩

ドコニモイケナイの菩薩のレビュー・感想・評価

ドコニモイケナイ(2011年製作の映画)
4.5
どえらい物を観たなって言うのが率直な感想だが、よくよく考えれば従姉妹にそっくりだわと冷静になった。2000年前後の時代性と渋谷って街の功罪を記録した優秀なドキュメンタリーだと思うし、人間が壊れる瞬間のそれはホラー以上のホラー、ただ生きる事自体が「作業」と化してしまう後半の方が断然キツい。1999年に滅びる筈の人類は滅びず、にせんねんもんだいでぐちゃぐちゃになる筈の世の中もそうはならず、と思ったら9.11でようやく世界は終わりに向かうかと思ったらそんな事もなく、そうこうしている間に自分を見失い居場所を失い…って人達が集う場所ってのが、あの時代の渋谷には確かにあったんじゃないかと思う。同列に加えるのはアレだがこれを少し前の時代に戻すとオウムみたいな共同体意識、彼等は外の世界を破壊する方に向かい、この映画の主人公は内なる世界を、自分を壊す方に向かってしまった。主人公以外の人物もフィクションでは到底辿り着けないレベルで「キャラクター」(って言い方もアレだが…)として存在しているし、彼・彼女等の口から溢れる言葉も仕込みか?って思いたくなる程真を突いている、もしくはその真逆。これを劇映画に、かつクソポジティブにしたのが『夜空はいつでも最高密度の青色だ』なのかなって思うし、『ラブ&ポップ』と『監督失格』の間に庵野が本気でドキュメンタリーやってたらこうなってたんじゃないかとも思う。正直こう言う人をどうやって救ってやるのが正しいのかも全く分からない、あの「また会おうね」も残酷にしか思えなくて辛い。
菩薩

菩薩