回想シーンでご飯3杯いける

理想の出産の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

理想の出産(2011年製作の映画)
3.5
学生の出来婚からスタートするので、冒頭は話のテンポが早くて、ノリも軽い。日本で出産をテーマにした映画を作ろうとすると、親としての心構えや責任といった道徳的な側面に重点が置かれがちだが、恋愛やセックスに対して開放的なフランスらしく、下ネタを交えながら、とりあえずヤッちゃえ、産んじゃえ的に事が進む展開は、決して悪くないと思う。

本作の中でも語られているが、全ての親が、親として初心者なのである。責任や心構えばかり考えていては、子供なんて作れない。日本でもこうしたカジュアルな考え方が広まれば良いのにと思う(ここで育児放棄や虐待を連想してしまうのもまた日本人的。むしろカジュアルに話せない、相談できない風潮こそが、そうした不幸を生んでいるのではないかという視点も必要ではないだろうか)

とは言っても、特に子供が生まれてからの夜泣きや、育児に対する父母、更にその両親との考え方の違いが描かれる後半の展開は、かなりシリアスだ。このシリアスな展開を踏まえて考えると、「理想の出産」というタイトルは、ある種の皮肉のようにも思えるけれど、子供がある程度大きくなった頃に振り返ってみると、それらの苦労も含めて、親も子供もひと回り大きくなる貴重な体験であり、やはりそれは「理想」的な時間としか言えないのではないかと、既にこの時期を過ぎた僕は考えている。