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ジャッジ・ドレッドのEikeのレビュー・感想・評価

ジャッジ・ドレッド(2012年製作の映画)
3.4
荒廃した近未来のアメリカ、東海岸は汚染され人々はメガ・シティ1と呼ばれる都市に暮らしております。
貧困と混乱が支配する街の秩序を守るのは判事権を付与されたエリート保安官:”ジャッジ”たち。
強面で知られるジャッジ・ドレッド(カール・アーバン)はある日新人ジャッジ、カサンドラ・アンダーソン(オリヴィア・サービイ)の適正試験を任されることに。
二人は無数に起きている事件の中からピーチ・ツリーと呼ばれる200階建のスラムビルで起きた殺人事件現場に赴きます。
しかしそこはスローモと呼ばれる違法ドラッグを取り仕切る凶悪なギャング、”マー・マー”(レナ・ヘーディ)の本拠地であり、彼女は自分の王国を脅かしかねない秘密に近づいた二人のジャッジを抹殺することを決意。
完全封鎖されたピーチ・ツリーを舞台に壮絶な戦いの火蓋が切って落とされる…。

1995年のスタローン版は未見。
本作も見かけは大して変わり映えせず、いかにもB級SF映画然としております。
出演者たちも比較的無名で言い方は悪いですが「パッとしない」。
ところがこれ、意外な拾いモノです。
本作、ストーリーの骨子はインドネシア産格闘ヴァイオレンス映画「レイド」の第一作とほぼ同じ。
閉鎖状況のビルの中で生き残りをかけて法の執行者がサバイバルを繰り広げてゆくというもの。
しかし、「レイド」が必殺のマーシャル・アーツ、”Silat”によるアクションを見せるという前提条件に基づいて作られているのに対し、本作はSF設定。
そのためアクション・スペクタクル類の描写に関しては遙かに自由度が高く、結果としてこの両作はそれほど類似した印象はありません。

本作の特徴はズバリ言って”ハード・バイオレンス”。
ディストピアテイストを生かしたSF映画は他にも色々とある訳ですがハリウッド製のメジャー作ではアメコミ作品を含めてずい分マイルドだったり「見映え」に重点を置いたりしたものが多く、妙におとなしい印象の作品ばかり。
時にはもっと荒々しいSF映画が見たいんだぁ…!
そんな青少年の健全な(?)要望に応えてくれる作品になっております。

本作を見て真っ先に思い浮かべるはやはり「ロボコップ」(もちろん1987年のオリジナル)。
過激な暴力描写の扱い方にも似た点がありますが、主人公二人の設定がやはり似てます。
ジャッジたちは全身プロテクターで固めておりますがドレッドは劇中一度もヘルメットを外さず正にロボコップ状態。
一方の新人ジャッジ、アンダーソン女史はヘルメットは被らず(それにもSFらしい理由があります)。
このコンビは正にロボコップにおけるマーフィとルイスのコンビにそっくりなのだ。

封鎖された巨大スラムビルの内部でのアクションに終始する物語ではありますが意外とスケールの小さな印象はありません。
CG描写による過剰なまでのシュートアウトシーンが出てきたり(一つの階を丸ごと蜂の巣に)ドレッド達が移動する階ごとに壁などの色調なども異なっていてちゃんと広さを感じさせるあたりも上手く出来てます。

肝心の過激なヴァイオレンスシーンに関してもほとんどが激しいアクションシーン中のCGによる処理でその部分だけを見せつける様な露悪趣味的な点はそれほどではありません(若干はあり)。

それでも陰鬱になり過ぎないのは無表情ながら黒いユーモアもにじませるアーバン氏のドレッド像がハマっている点が大きいですし後半にタフさを増すアンダーソン女史の姿が中々に凛々しいからですね。
ギャングのボス、マー・マーもビッチで破滅的なキャラで魅力を放っており、その意味で女性にもおススメしたいところではあるのですがやはり「血と暴力」に免疫がない方向けの作品ではないですね。
ハリウッド大作の様に洗練はされてませんが(撮影は南アフリカ)この荒々しさも時には魅力的であります。
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