螢

ムーンライズ・キングダムの螢のレビュー・感想・評価

ムーンライズ・キングダム(2012年製作の映画)
3.8
コミカルで、ポップで、カラフルで、ゲスで、さり気に残酷。徹底してシュールなおとぎ話的展開でしかも超ハイスピード。
そのくせ、社会問題も盛り込みつつ、ヒューマン要素と偉大なる愛を盛り込んで、最後はちゃっかりしっかり綺麗にまとめて魅せてくれる。

もう、ウェス・アンダーソン監督の世界観全開で、楽しいことこの上ない。これぞ匠の技。
全て相変わらずなのに、その全てに虜になる。

突如駆け落ちをした12歳のサムとスージー。そして、彼らを追う人々の姿を描いたドタバタコメディ系映画。

深刻さも暗さもうまーくおとぎ話的世界観に変換されて、ひたすらコミカル&ハイスピードにどんどん話が進んで行くので、そのカラフルレトロで可愛く綺麗な映像と音楽を純粋な気持ちで楽しんでいればそれで十分なのだけど、そこはやはりアンダーソンの妙技が効いている。

それぞれの事情から共に問題児扱いされて周囲と打ち解けられなかった二人が駆け落ちを決行するまでに至った交流や絆、そして、身近な大人に持て余されていた二人に手を差し伸べた他人の優しさにホロリとさせられるし、考えされられることもいくつもある。
まあ、優しい人々にも、ゲスで俗な面があることはちゃっかり描かれているのですが。
そんなところもやっぱりアンダーソン。むしろ素敵だと思えるから不思議。

90分で観られるし、その独特の世界観にはどっぷり浸かれるしで、これは広くオススメしたい作品です。
螢