さりさり

遺体 明日への十日間のさりさりのレビュー・感想・評価

遺体 明日への十日間(2012年製作の映画)
4.1
最初から最後まで泣いてた。
じわりじわりと涙が溢れる感じ。

2011年3月11日に起きた、東日本大震災。
被災地での遺体安置所の様子を生々しく描く。

震災の直後、閉校された中学校に急遽設置された遺体安置所。
なんの設備もなく、水も電気も通らない場所に、次々と遺体が運び込まれる。
搬送作業をする消防団員は泥まみれ、安置所の床に敷かれたブルーシートも泥水だらけだ。
そこに、まるで「物」のように置かれる多数の遺体。
当時の混乱した状況が手に取るようにわかる。
身元確認もなかなか進まず、火葬場も停電のため稼働しない。
遺体は増える一方だ。

そんな中、西田敏行演じる民生委員の相葉は、かつて葬儀社で働いた経験を生かすべく、ボランティアで作業に参加する。
搬送された遺体一体一体に温かい言葉をかけ、まるで生きている人間のように接する。
相葉が優しい言葉で語りかける度に涙が溢れた。

「ここに横たわっているのは死体ではない。ご遺体だ」
「ご遺体は話しかけると、人間としての尊厳を取り戻す」

そう力強く訴える相葉。
優しさ以外の何物でもない。
真心は必ず周りに伝わる。
やる気のなかった市の若い職員が相葉の姿に触発され、変わっていく様子が嬉しかった。

たくさん涙が出たが、住職を演じた國村隼が更に追い打ちをかける。
あの場面は名シーンと言っていいと思う。
今回はあのシーンで一番泣いた。

辛い映画だったが、観て良かった。
この映画は亡くなられた方々への鎮魂歌のような映画だと思う。

当時、遺体の搬送作業、身元確認、その他諸々のことに尽力された皆様、本当にご苦労様でした。
何も出来なかった私は、ただ頭が下がる思いです。
さりさり

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