くりふ

マリーゴールド・ホテルで会いましょうのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【セカンドインド】

DVDレンタルにて。

英国エルダーズがインドで第二の人生を見つける大人のおとぎ話…と書くと紋切型ですが、ちょっとキレイに流れまとまりすぎるのでそう感じます。

長編原作を刈り込んだせいなのか、各エピソードが軽く、物語は慌ただしく結末になだれ込む弱みも感じます。でも、やさしくていい映画ですね。

あと、インドでなければいけないメンバーが少ないこと、また現地の生々しさがあまり伝わらない辺りが引っかかりました。舞台をインド以外にしても成り立ちそうです。「The Best Exotic Marigold Hotel」という宣伝に騙されて来てしまう一行なので、これくらいのトーンが適切なのかもしれませんが。

面白くなったのは、勤務地としてのコールセンターが出て来てからですね。最近はフィリピンにシェアを奪われているようですが、Exoticでない現実のインドを見ようとしているな、と感心しました。ここはもっと掘り込んでほしかったくらい。

イントロからの伏線が生かされて、ジュディ・デンチ演じるイヴリンがそこで見つけるものがいいですね。国境を越えたつながりでした。かつての植民地で老人たちが心を見つめ直す、という構図が今さら大げさなことではないですが、面白いです。

「The Best Exotic Marigold Hotel」を売り込む時、インド青年ソニー(『スラムドッグ$ミリオネア』で成功した筈なのに冴えないデーヴ・パテール・笑)はかつての植民地の豪華さをお楽しみください…的な口上をするんですよね。アイロニーというより、もっと互いの壁を壊しましょう、というベクトルかと。

高慢な英国元使用人と、現在の下層インド使用人との触れ合いにもそれが現わされています。国境を、年齢を、性差を、身分を…越えてつながりましょう、とする心の方向性が、嫌味なくサラリと描かれています。そこがいちばんいいところかな。

でもその舞台として、ここで描かれるインドでなければいけなかったのかなあ?とはやっぱり引っかかってしまう私です。

インド映画でいいな、と思っていたリレット・デュベイさん登場が嬉しかった。…もっと若い頃の艶姿を見たいんですけどね(笑)。

<2014.5.22記>
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