塩湖

空気人形の塩湖のレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
4.5
監督のトークつき。ACのコマーシャルの類いとこの映画とのあいだに横たわっているきょりとは一体何なんだろう。こころを獲得したラブドールが現実の日常世界を歩む過程に「彼女が人間にしか見えない瞬間」など遂に一度も訪れない。その事実は、ラスト付近の痛切な展開がけっして猟奇スリラーの色に染まり得ないことを示すほとんど唯一の証人として映画の上に鎮座してて、そのさまが力強く、どうしようもない程に美しい。最後のハイライトである誕生日ケーキのシーンを成立させる為の伏線を中盤のある地点に敷く直前、「にんじんを床に捨ててアイコンタクト」のくだりをさりげなくはさむ辺りが、やっぱり信頼できるなと思う。サブキャラへの息の吹き込み様もそれぞれ個性的でいい(シネフィル設定の柄本佑はおよそ本人でしょ)。どんだけ『マグノリア』好きなんだよと笑える演出もあった。それから劇中に出てくる台詞に関して、

本作
→「うんでくれてありがとう」

『ベイビー・ブローカー』
→「うまれてきてくれてありがとう」

だから、内容はともかく、たしかに監督自身のキャリアにおける子目線から親目線への転換というのはそこから読み取れるな…とトークを聞いた上で補足的に考えたりもした。
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