イマノ

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのイマノのレビュー・感想・評価

3.9
個人的火曜ロードショー、9作目。時世もあり戦争映画でも観ておくべきかと思い、有名な作品だけどまだ観てないな、という事でチョイス。が戦争映画というのともちょっと違う気がしますが。

以下感想。

・キューブリックらしい静けさがところどころに。
・キューブリックらしい変人があちこちに。
・白黒だけど別に観づらさとかは特にない。
・ブラックコメディということですがまあブラックです。
・本作90分ちょいですが、120分作品じゃなくてこの尺がとてもちょうど良いと思う。
・時代というのもあるのだろうけど2001年のHALみたいにキューブリックが表現する機械のイメージってとにかく冷たくて怖いよね。インターステラーのターズとは大違い。

・大量破壊兵器で自分を守ろうとすることが最終的に人類を滅ぼしかねない、という教訓めいた話にも見えるけど、知性では乗り越えられない男性性みたいなものを突き付けられたような気がして哀しい感じもある。
・何が哀しいって、ところどころのバカバカしい展開について全否定しきれないところが哀しい。

・一人の異常が世界を混乱に陥れるというのがこの映画の序章だけど、2022年4月の現在にその現実味を痛感することになるとは思わなかった。
・ざっくりいうと全編男根の話。(※男根は一切出てきません)んで、そこから感じたのは戦争というのは民族とか国家とか宗教とか経済とか動機は一見様々に見えるけど、最終的には生殖本能の衝動なのではないかと思えてくる。というかそういう話。

・だからこそ現実の戦争も非合理的に見え、それは実際非合理的であり、さらには止めようのない強大な意思(衝動)で展開されているのではという暗澹たる気分になる。
・エヴァンゲリオンが放送されていた当時、絶望的なシーンに似つかわしくない音楽(第九)が使われている事にとても革命的な印象を受けたもんだったけど、そんなのは50年以上の前のこの映画で既にやってるんだなと。もっと古いのもあるんですかね。

・突き抜けて面白い!というエンタメ映画ではないけど、ブラックユーモアにニヤニヤしたり「う~む」と笑えなくなったり。
・評価的には3.9にしたけど男性性のバカバカしさと虚しさが詰まった素晴らしい映画だと思う。
・名作だし時世でもあるし思うところ色々あるし90分ちょいだし、観ていて絶対に損はない映画だと思います。

以上です。
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