イマノ

君の名前で僕を呼んでのイマノのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.3
個人的火曜ロードショー、7作目。今週は何を観ようか考えていたら、友人より「Coll me by your nameを観よ!」とレコメンドされたので観ることに。邦題が「君の名前で僕を呼んで」なのね。完全に初見なのであらすじとかジャンルとかノーチェックで観ました。ちなみに今週火曜日はチビ達と寝落ちしたので、翌日水曜に観てたら半分くらいで地震が来て家中大騒ぎになったので途中でやめ、更に木曜日に残りを観ました。
以下感想。

・前情報ゼロで観ましたが一言でいうなら”とても美しい映画”でした。
・何が美しいって、風景、音楽、ストーリーどこもかしこも。
・音楽がいい。ピアノの曲も良いが、ボーカル入りの曲が良かったので少し調べます。スフィアン・スティーヴンス。音楽の知識はあんま無いので例えがアレですが、後期ゆらゆら帝国のような煙たい浮遊感。
・自然が美しい。真夏に青々と草木が生い茂る生き生きした田舎、要するにうちの畑とか庭とか近所とかを思い出す。川の表現も良い。小学生のころの夏休みの風景みたいなのが全編を覆う。
・舞台である北イタリアの自然風景が”光に満ちていて明るい”というのがとにかくよく伝わって気持ちが良い。画家のターナーはイタリアへの旅行から画風が一気に明るくなったとか、ゴッホがアルルに来てから(アルルはフランスだけど確か緯度は近い)画面が明るくなったとか、そういう明るさ。

・ジャンルでいうと青春映画という分類で良いよね。
・あるシーンでの親しい人の結婚の報告という”子供という時代が終わっていく感”みたいなのも既視感でぐっとくるものがある。
・雑にあらすじを説明すると同性愛ラブストーリーなんだけど、その枠ではないところで語ったり思ったりすることがとても多い映画。
・これが異性愛であったとするなら普通の恋愛映画で終わってるんだけど、舞台である1983年での同性愛という特別性(例えばオリヴァーのセリフ「親にバレたら矯正施設送りだ」など)によって、人生のある時期における唯一無二性を抽象的に表現した映画になっている。

・二度と手に入れられないある時期における輝き。青春や。
・エリオと父親の会話のシーンは特に好き。
・多かれ少なかれ誰でも持っているような「渇望していたが当時の自分の中の何かが妨げて手に入れることができなかったこと」と「渇望して手に入れたが失ってしまったこと」とでは後者の方が痛みが大きいが価値がある。そしてそれを知っていることは幸運である。
・自分の話になるけど、妻と結婚する前に色々小さな旅行に行っていた事を思い出して「本当に行っておいて良かった」と思い返すことがある。今、同じ行動をしても同じものは手に入らず、当時の感情、関係性、時代の中で経験する事でしか、その記憶をパッケージすることができないという事を思ったりする。それは、人生という長い目で見ればごく些細な事であり、その後の人生で資産が増えるとか仕事で成功するとかになんの影響もしないものの、突き詰めればこういった些細な煌めきがどれだけ集まるかで人生の豊かさが決まるんじゃないか、とか割と本気で感じていたりする。
・で、この映画はその”人生という長い目で見れば、無かったとしても何とでもなる自分だけの些細な煌めき、その美しさ”みたいなものが詰まっていると思ったりしたわけです。
・総じて美しくとても良い映画でした。

以上です。
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