n0701

二郎は鮨の夢を見るのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

二郎は鮨の夢を見る(2011年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

米が豊作ででんぷん質が多分に含み、自分の思うような鮨にならない。だから悪夢を見る。ノイローゼになる。

そこまでの完璧主義者。



この映画は、喜劇だ。

鮪の仲卸業者は「自分の買う鮪は特別」だと豪語するが買い付ける場面は見せない。
市場の様子はジャングルと言わんばかりに競りの様子に音楽を組み入れる。
全然間違っている息子の旨味の説明。
寺に勝手に入ってお詣りしたり、柏手を鳴らす様子。

どこか、おかしい。

結果的に物語は「受け継がれる意志、技術」に収斂する。
二人の息子と暖簾分けをした幾人もの弟子たち。

「うちがいた頃には、くしゃみひとつしたら、おしぼりが出てきた」と弟子が言うと「今なんてもっとすごいよ。店に入ったら出てくる」と答える次郎。

耳にガタがきて、齢90を目前にして、手術も行い、それでも握る姿は形容し難い。

壮絶な幼少期や貧乏生活を強がって見せる心意気。江戸前とはその強がりや心意気そのものだ。

よく高級鮨店が詐欺師扱いされることがある。当然それは誤解だ。
仲卸に最高の食材を提供されるには、普段から通常よりも高い値段で取引し続ける必要がある。

さらに仕入れ仕込み、施設使用料と職人の給料とかかる費用は甚大だ。

それでも尚、人は高級鮨を求める。
何故なら魚を旨くする術を職人は知り尽くしているからだ。

よく鮨は「玉子」「コハダに始まりコハダに終わる」「マグロの赤身が看板」「穴子でその店の個性がわかる」と言う。

何故か失敗した様子を映される弟子は気の毒だ。その玉子焼きはカステラのようだと、形容される。

コハダは喉が鳴るほど旨い。
酢でかなり強めに〆ている。
大トロの脂身を消すためだ。

鮪は寝かせる。
何十万もする鮪を氷付けにしておく。「新鮮」の概念か崩れ、常識さえ揺らぐほどだ。

フルコースは三万円。

黙々と20貫前後提供され、食事に使う所要時間は20分かそこらだ。会話もなく、重苦しい空気の中、世界中から食通が現れる。

今や全く予約のとれない超名店には、常人には理解し難い世界がある。それが彼の見る夢に違いない。
n0701

n0701