オープニングから雨宮慶太ワールド全開である。
ある意味「牙狼」シリーズの一つの集大成とも言える作品。
基本的に私は雨宮慶太さんが生み出す「造形」のファンである。
それらからは何処かに少年の持つあどけなさや純な部分や、玩具箱をひっくり返した様なワクワク感がある。
本作品にも、そういう要素や魅力が一杯詰まっていると思う。
そして、この作にはもう一つある。
それは偉大なクリエーター達に対するオマージュ。
作品を観てもらえば分かると思うが、ジェームズ・キャメロン監督のあの作品や、宮崎駿監督の数々の作品へのオマージュを感じさせるものが随所に登場する。
人は美しいものを創造する、それは絵画や彫刻、陶器をはじめとした美術工芸、小説や詩等の文学、歌や踊り等の芸能、そして映画を中心とした映像文化。
それらの中には芸術品や名品として永久に美術館や博物館に収蔵、展示されるものもあるが、大半は日常で使われ、古くなり、やがて捨てられていく。
それでも人から長く愛用されたものは記憶に残ると思う。
この作品は、それらのものと人との関係をテーマに想像力の翼を広げたファンタジー映画だ。
人が持つ美しいものを創造する力の素晴らしさ。
その作り手が「もの」に込めた思いを享受する我々。
時々私は映画にしろ文学にしろ、この様なレビューを書いている時にどれだけ作り手の「思い」を汲み取っているのだろうかと疑う。
最強の魔戒戦士・冴島鋼牙の物語の終幕を描く本作を通して、雨宮慶太監督の「ものづくり」にかける矜持が感じられた。