オトマイム

ローラのオトマイムのレビュー・感想・評価

ローラ(1981年製作の映画)
4.1
ローラは男たちのマドンナ或いは娼婦と同義語なのか。ツイン・ピークスのローラ・パーマーやジャック・ドゥミのローラ、ほかにもあったような気がするがこのローラもクラブの歌姫であり娼婦である。彼女の歌い踊る姿は抜群に可愛く、とくにあのふっきれたメチャクチャな踊りっぷりは魅力炸裂。名シーンですね。

戦後10年経った経済成長著しい西ドイツ。娼館で歌うローラは自分の生きる道を時代に同調させまったく悲壮感はない。時代の波をうまく操るパトロンのシュッケルト、汚職と折り合いをつけながら真っ当に職務をこなす紳士フォン・ボーム、彼の童貞的な恋心にうっすら涙(してないけど)。容れ物と中身の成長速度がずれながら膨らんでいく戦後ドイツの混沌とした、享楽と正義が混在する社会をしたたかに生きるたくましい人びとの生きざまは見応えがあり、今の映画には出せないであろう旧西ドイツ臭が濃密に漂っていた。それだけでも観る価値があるのではないだろうか。

メイン3人をはじめ登場人物のキャラが立っており、花とお茶が似合い主婦然としながら意外に優秀な秘書などもなかなかいいスパイスになっていた。これまで観たファスビンダーではいちばん観やすく、面白かった。かなり好き。