ユカリーヌ

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯のユカリーヌのレビュー・感想・評価

3.5
【過去に観た映画】2017.8.31

1961年に名張市で起きた実際の事件を当時のドキュメンタリー映像とドラマの部分で構成した映画。

無罪から一転、極刑になり、再審も棄却され、51年間という長い年月を拘置所で生きる死刑囚 奥西勝。

青年時代の奥西を山本太郎、60~70代の現在を仲代達矢が演じ、母を樹木希林が熱演。
ナレーションは寺島しのぶ。

物的証拠がほとんどなく、強要された自白だけで、死刑が確定するが、後から検証すると、
そのずさんな捜査に唖然とし、憤る。
こんなカタチで、人一人の人生を狂わせるのか!と。

真実が真実であると認められないことの怖さ、真実が歪められていくことに立ち向かえない虚しさを嫌というほど、突きつけられる。

しかし、立ち上がった弁護士による最新技術による鑑定や
ネット社会ならではの力で検証していく姿には、心がはやる。
しかし、それでも「司法」の壁は閉ざされる。
それは司法のプライドを守るためだけにしか思えない。

実際のドキュメンタリー映像は「司法」に立ち向かった
ような撮り方である。
再審を決定した裁判官は、後に辞め、再審を棄却した裁判官は、後に栄転する。

そして、元裁判官は司法の縦社会のことを涙をうるませながら語る。

唯一の物的証拠であった、ぶとう酒の王冠の鑑定のねつ造とも思えるほどのゆるさ。
それを突きつけると逃げる鑑定者。

これだけでも司法への不信は十分だ。

突如表れた人権団体の川村氏は奥西に支援を申し出る。

彼は無実の罪の奥西を救うため、本当に「正義」だけで
動いている。
「死刑囚の奥西とは何度も会っているが、死刑囚でない奥西と会いたい」といい、
 奥西と、「しぶとく生きよう」と誓う。

しかし、長い戦いの末、川村氏は無念を晴らすのを
待たず、亡くなってしまう。

このシーンは泣けた。
ドラマではなく、これが「現実」だから……。

三畳一間の独房を「地獄だ」と語る奥西。
自ら死を選ぶことだけが自分にとっての自由だが、
それをすることは罪を認めることになるので、
必死に生きるのだという。

パンフには映画監督の森達也も
「この国には多くの奥西がいる」というタイトルで寄稿。

★5年位前だが、読んだ 森達也の「死刑」。
この本の発行から何が変わっただろうか……。
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10087076606.html

チラシには郷田マモラもコメントをよせている。

★郷田氏の「モリのアサガオ」は新人刑務官と死刑囚の物語。
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10001759462.html

映画を観終わって、一緒に観たシナリオ仲間と映画について
かなり熱く語る。
冤罪なら、真犯人は誰だ? 動機は?って
二人して気分は名探偵。
ユカリーヌ

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