YasujiOshiba

キャビンのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

キャビン(2011年製作の映画)
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ふたりの冴えない上級技官の会話。なにかNASAの司令室のようなその場所からカメラが外に出れば、一転してセクシーな女子たちの部屋。お決まりの軽いやりとり。お決まりのマッチョな男子たちやってくると、お決まりのオタクが合流し、みんなでお決まりの山小屋におでかけだ。

いやあオープニングからB級臭たっぷり。ほらねジャンル映画の王道を踏まえてるでしょという目配せがあるのだ。それは、どこかポルノグラフィー特有の共犯への誘いなんだけど、そのさりげなさにはちょっとした知的センスが感じられんだよね。

一緒に見ていた娘は、「大乱闘スマッシュブラザーズ」みたいと言っていたけど、それは一理あるかもしれない。あのゲームは、舞台を設定し、それぞれのキャラクターの特性を理解し、知的な戦略を立てながら、敵を葬るのだけど、その敵というのが、じつのところ自分が操るキャラクターと同じというのがポイント。そしてゲームにのめり込むことそのものが、ゲーム業界そのものを突き動かす欲望という怪物を鎮めている構造になってはいないだろうか。

この映画が知的なのは、そんなメタレベルのストーリーを意識させてくれるところ。ゲームはゲーム、ポルノはポルノ、ホラーはホラーなのだけど、そんなことはわかっているけれど、それをちょいと外側から見ればどう見えるだろうか。

つまるところ、ゲームもポルノもホラーも、世界のあちこちに建てられた社のようなもので、そこに参拝するもの参拝を迎えるものも、その社に祀られた怪物を鎮めながら、その力を利用しているわけだ。

そんな社のひとつが、たとえば日本の「制服を着た女子生徒たちのいる教室」であってもよいだろうし、「美男美女たちとオタクがヴァカンスを過ごしにゆく山小屋」でもよいわけだ。

なんだかアガサ・クリスティの「アクロイド殺し」を思い出させるこの知的なホラーコメディ。

いやあおもしろかった、パチパチパチ!
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