Kuuta

シュガーマン 奇跡に愛された男のKuutaのレビュー・感想・評価

3.7
ロドリゲスを聖人化し過ぎでは?と思うし、ドキュメンタリーとしてはイメージ映像が多く、生の迫力に乏しい。しかしながら、本当に凄い話だった。事前情報無しで見た方が良いので(Filmarksのレビュー、ヌルッとネタバレしてる人が多い気が)、あんまり本編と関係ない話を書きます。

・劇中で語られる通り「人間の可能性」についての話だし、私としては「インターネットが普及した今では絶対に起こり得ない奇跡」という所に特に惹かれた。

狂ったようにアルバムを聴き、歌詞を深読みし、それが都市伝説を生み、コミュニティを形成する。レコードの断片的な情報からロドリゲスへの想像を膨らませる場面、音楽ライターの悪文ライナーノーツを、福音のように読み込んだかつての自分を思い出した。

自分だけは作品の真実を掴んでいるという妄想めいた確信が、一縷のファンの愛が、線となり、物語を動かしていく。今は検索すれば作品の情報も「共感」してくれる人も簡単に見つかるから、こういう感覚も持ちにくくなっているんだろうなぁと思った。

・霧で霞んでいた視界がクライマックスのある一点で開け、この上ない現実が現れる。この構成は見事。終盤は予算不足でまともに撮影できなくなっていたらしく、あらゆる手段を講じて目の前の状況を繋ぎ止めようとする編集も感動的だった。

・黒人社長の怪しさ、あの場面だけは生のドキュメンタリーっぽい感じ。インタビュー中にカメラに近づいてきて、顔に影がかかる。
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