Skyler

リンカーンのSkylerのネタバレレビュー・内容・結末

リンカーン(2012年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

南北戦争中に何代目かの大統領に就任したリンカーンが奴隷解放のため、憲法修正案を成立させる話し。

リンカーンは、奴隷解放を実現した大統領として有名だが、それは政治的な表向きの部分であり、実際は選挙の勝利、工業を中心とした東部の経済的理由もあり、純粋な人権解放を目指していた訳ではないとの見方も一般的。ネイティブインディアンは初めから存在しなかったものとして虐殺していたらしい。
近年某国で起きた大虐殺と同じセオリーだ。

それでも作中にあったように、人種に関係なく国民と直に忌憚無く交流できる新しいタイプのリーダーだったであろうことは見て取れた。
故に奥さんが自慢していたように、
誰よりも国民に支持された大統領に成り得たのだろう。

スピルバーグが描いたのは、南北戦争そのものではなく、その影で繰り広げられていた机上の論争、議会政治。
昔、学生時代にゼミの教授が、世の中は声の大きな者が勝つ、と言っていた事を思い出した。議会では相手を声で打ち負かさんとばかり大声で罵り合い、アメリカンブラックジョークが飛び交い、神は人間を平等に作った派と平等に作らなかった派が対立する。
良く言えば、それがとても丁寧に描かれている。悪く言えば、冗長で不愉快な議論に嫌気がさして来る。

妻は、可愛がっている身内は戦争で無駄死にさせたくないとヒステリーを起こし、特権意識を始終露わにする。

馬を駄目にした16歳の黒人少年が、射殺された(絞首刑?)になったとのエピソードがあったが、リンカーンの理論は、
そんな事で16歳の少年を殺していたら16歳の少年がいなくなってしまう、というまたまた不愉快なアメリカンブラックユーモア?のようなもので呆れるばかり。

終戦後、死体置き場と化した戦場を視察し、ようやくその戦争の凄惨さを理解したようだったか、疲れたから奥さんと一緒に海外旅行の計画を立て、舞台観劇中に暗殺されるも、何の臨場感もなく歴史的な悲劇であるにもかかわらず感情が全く動かないのはどうしたものか。

彼は結果的に奴隷解放宣言し、アメリカ史上英雄となったわけだが、人物的に魅力的とか人格者とかではなく、頭脳は抜群に明晰だか、つかみ所がなく隙のない人物で、自分のイメージも同じようなものだったので、監督は近い人物像を描けているのではないかと思う。
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