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アフター・アースのnetfilmsのレビュー・感想・評価

アフター・アース(2013年製作の映画)
3.5
 2025年、地球では戦争や環境破壊を繰り返し、天災や飢餓にも襲われた我々人類は自らの故郷である地球を捨て、遠く離れた惑星ノヴァ・プライムに移住せざるをえなくなった。だがノヴァ・プライムの先住民は、人類を抹殺する巨大生物「アーサ(URSA)」を作り上げた。「アーサ」は視覚も嗅覚もないが、人の恐怖心を察知して攻撃する人類殺害生物だった。人類が地球を去ってから1000年後の未来、レンジャー部隊の候補生である13歳のキタイ・レイジ(ジェイデン・スミス)はただの訓練を競争だと思い必死に走るが、能力的な成績は良いものの精神的には未熟とみなされ、レンジャー昇格を見送られる。そんな失意のどん底にあるキタイのもとに、レンジャー部隊の最高司令官である父親のサイファ・レイジ(ウィル・スミス)が宇宙遠征から帰国する。サイファの妻でキタイの母親であるファイア・レイジ(ソフィー・オコネドー)を交えた一家の食卓では、重々しい空気が流れている。最高司令官としての姿ではなく、あなたに求められているのは父親としての姿ではないかと妻に説得されたサイファは、引退前の最後の任務にキタイを同行させることにした。

 ガブリエレ・ムッチーノ『幸せのちから』以来7年ぶりの父子共演作。地球を捨て、ノヴァ・プライムという別の惑星で1000年間、子孫を絶やさなかった地球人に初めて存亡の危機が訪れる。生意気盛りで半人前の主人公が自信過剰の罪でなかなか昇格出来ない様子は、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)を彷彿とさせる。 M・ナイト・シャマランの映画では、平和に見える家族がいつも何かしらの問題を抱えているが、今作も例外ではない。13歳になったキタイは幼少時代、自宅に襲撃してきたアーサから守られるようにカプセルに逃げ込み、姉のセンシ・レイジ(ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ)を目の前で殺されてしまう。キタイやサイファにはふと、あの頃の長女の眩しい笑顔がトラウマのように立ち現れる。息子はそれ以来、贖罪の念に駆られ、まともに父親の目を見ることが出来ない。宇宙船の中でも、父の隣りで眠ることさえ出来ないキタイは、宇宙船の内部を探検する途中、レンジャーの訓練のために捕獲されている姉を殺した憎き「アーサ」を目撃する。

 いつもとはまったく毛色の違うSF作品だが、大事故の奇跡のような生き残りの描写は『アンブレイカブル』を彷彿とさせるし、関係が破綻した家族が修復を試みる主題系においても、父子のシンプルな構造においても、至る所に M・ナイト・シャマランの刻印がはっきりと見える。特にSF作品において、ホラー映画のような草むらに置かれたステディカムの後退撮影には参った 笑。両脚の壊死により息子に指示を出すことしか出来ない最高司令官が、あえて息子をすっかり荒廃したかつての故郷に送り出すのだが、混濁しそうな意識の中で、モニター画面の中の息子を見つめる様子には父の愛が滲む。だが一方でウィル・スミスが用意した父子の美談はあまりにもシンプルで、あっと驚くような起伏や展開には乏しい。危険度1の惑星の割りにはその裏付けが足りないし、不時着した段階では全員を生かしておいて、キタイ以外の乗組員が新種の生物に次々に殺されていく設定ならばある程度の裏付けが取れ、説得力も増したに違いないがそれすらも放棄し、13歳に全てを託す展開はやや強引で無理がある。しかし単なる雇われ仕事とはいえ、『ヴィレッジ』辺りから確立した圧倒的な映像美はシャマランならではの魅力を放つ。今作では例外的に、90年代以降のデヴィッド・クローネンバーグのパートナーである撮影監督ピーター・サシツキーが、シャマランの独特の色彩美に加わる。
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