こたつむり

クロニクルのこたつむりのレビュー・感想・評価

クロニクル(2012年製作の映画)
3.7
偶然、超能力を手に入れた少年たちの『過ぎたるは、なお及ばざるが如し』を地で行く物語。佳作。

本作で“いの一番”で言いたいのは。
何故に“登場人物が劇中で撮影している体裁”にしたのか、ということです。

これは、劇中で“カメラが人の手から離れる瞬間”を描きたかったから…なのでしょうか。いや、確かに、その試みは面白いと思いますけどね。なかなか斬新なアイディアですけどね。でも、それが物語へ没入することを阻害する要因になっている、と思うのです。

必然性を感じない演出は疑問を生じさせるものです。だから、物語が盛り上がってきても「あれ、これって誰が撮影しているんだっけ?」なんて余分なことを考えてしまうのです。というか、あえてそれを狙ったのでしょうか…?

というわけで、最初から厳しいことを書きましたが。うん。それ以外の部分は綺麗にまとまっている作品だと思いました。上映時間も84分と短く、贅肉をキッチリと落とし、それでいて主人公の家庭環境など、描くべき部分は丁寧に描いています。

だから、物語の勢いが早くなる部分でも。
振り落とされずに観ることができました。

また、配役も良かったですね。
主人公、従兄弟、人気者の友人、父親、母親、あまり美人ではないガールフレンド。どれもこれも適役だったと思います。特に主人公の憂いがある雰囲気は、一部の母性本能溢れる女性に好評なんじゃないでしょうか。

あ。でも。
本作は主人公に進んで感情移入するタイプの作品ではないので、「うわぁ。こいつキライ」なんて思うかもしれませんが、それは生温かい目で見守ってほしいと思います。何せ、安息の場所である家庭が落ち着かない…というのは色々と歪みを発生させるのですから。

まあ、そんなわけで。
根底にあるテーマはありふれたものかもしれませんが、短い時間で余韻を残す物語を作った力量は流石であります。カメラの件を気にしなければ、お薦めの作品ですよ。

最後に余談ですが。
…鑑賞中、藤子・F・不二雄先生の『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』を連想してしまったのは内緒です。物語もオチもキャラクタも全然違うんですけどね。
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