tak

キリング・ミー・ソフトリーのtakのレビュー・感想・評価

2.8
チェン・カイコー監督のハリウッド進出作品は、ロンドンを舞台にしたエロティック・サスペンス。「さらばわが愛 覇王別姫」の情感はどこへやら。「子供たちの王様」や「北京バイオリン」とか好きだっただけに、どうしてこういう題材を撮ったのだろうと不思議でならない。

「知らない人にはついて行かない」って、お子ちゃまの時に親に教わらなかったのかよ、と思いながらヒロインの行動を見る。
あーあー😩、おいおい😳、ええーっ😟
「北京バイオリン」の少年の方が、よっぽど節度ある行動ができてると思うぞ。彼の素性を知らないことに脅迫状のようなものが届き始める。ほーら、言わんこっちゃない。

ヘザー・グラハムは出し惜しみしない俳優とは聞いていたけど、この時代のハリウッド映画を避けてた僕は、彼女の主演作をほぼ知らなかった。恥ずかしながら今回が初めて観たのかもしれない。ギョロ眼が恐怖でさらに大きく見開かれる表情が妙に怖い。ジョセフ・ファインズは「恋におちたシェイクスピア」こそ純な役だったが、この映画では最初に登場する表情で、もう何かやらかしそうな雰囲気を発散している。登山家役のせいなのか、どこかしら野口健を思わす表情するし(考えすぎです)、さらにプリンス殿下が舌なめずりするような不敵な微笑み。

映画前半は二人がどれだけ自分たちの世界に溺れていくかが示される。性愛描写は噂通りの迫力。エスカレートした二人は、彼女の首に布を巻きつけて首が締まるようなプレイまで始める。あの「愛のコリーダ」のクライマックスや、俳優デビッド・キャラダインの死に様を思い出さずにいられない。後半は、元カノの写真や手紙から、彼の言動に疑惑を持ち、真相に迫るまでの物語。ガラッと雰囲気が変わり、サイコサスペンスの趣に。

時に暴力的になる気性の荒さ、異常な性への執着。ひったくり犯を追い詰めて半死半生に痛めつけた後で「結婚しよう!」はナイ!と思います✋。こっちまでドン引きしました。ともかく、これまでのチェン・カイコー映画らしさを探したけれど、どこでそれを感じたらいいのかわからない作品でございました。
tak

tak