初鑑賞。シリーズの中で一番フラットに楽しめた。映像美は過去一、キャラクターも可愛く表現できている。
音楽を取り返す『リメンバー・ミー』なお話だけど、今作があったからこそ数々の名曲を乱れ打った89年版『リトル・マーメイド』があると思うと有り難みがある。オリジナルの邪魔はせずしかも双方の評価がちょっと上がる、というファンに優しい前日譚。
このシリーズのヴィランはトリトンであるとはっきり分かる。今作で王国分解の危機を迎えておきながら、何年経っても「自分が法律であるから皆も従え、口答えはするな」という家父長制剥き出しの独裁者のエッセンスが根本からは改善されない。全く同じ過ちを89年版で繰り返す。
一応マリーナがヴィランの立ち位置にはいるけど、彼女がヴィランと認識するまでに少し時間がかかった。支配欲国王と我儘娘たちに板挟みにされた気の毒な中間管理職という意味では敵対するセバスチャンと全く同じポジションのキャラクターだ。アースラやモルガナとは根本から違う。恐るべき絶対悪な感じは無いが、王国の内部分裂の話に外界からの敵は不要なのでこれでいい。
シリーズを通して断トツで労働量がエグいセバスチャンにスポットが当たっていたのも良かった。王の側近として、小さなカニとして、音楽を愛する者としてそれぞれ見せ場がある。
やっぱり、(そもそもキャラクター魅力依存度の高い作品なので)下手に新キャラを増やして彼らの話にするくらいなら、お馴染みキャラの掘り下げに注力してくれたほうがいいな〜と思った。アリエルの6人のお姉さん方が各々のスタイルで音楽クラブを楽しむシーンが素敵。こんなに可愛らしい人たちだったのね。
その他、
○ 一人だけ別の音響監督入った?と勘繰ってしまうベンジャミンのおっとりボソボソ演技がツボ。異質すぎる。ほぼプーさん。何もしなくても、存在と発言がギャグになってる。吹替がまさかのバナナマン日村でより面白い。
○ アリエルたち姉妹が整列しているとき、ずっと立ち泳ぎでゆらゆらさせている尾ひれにばかり目が行った。なぜだろう。
○ このテーマならもっと音楽を魅力的にしないと!