このレビューはネタバレを含みます
実話が元になっている映画で非常によくできていると勧められ、当時の職場の職員数人で鑑賞！
はじまりは雑誌の編集部に１通の手紙が届く。
その手紙の差出人は殺人の容疑で服役している死刑囚からだった。
拘置所に訪れた記者である藤井は須藤と面会する。
そこで須藤が藤井に語った内容は、まだ警察にバレていない殺人が３件ある。そして、その３件の殺人事件の主犯格の男がシャバにいるという。
須藤はこの男がかつて自分が「先生」とよんで慕っていた男である事を伝える。
「先生」こと木村は、須藤を使って借金を返さない男を殺しその死体の処理を須藤に行わせたのを皮切りに、土地を持っている老人を殺し、土地を奪い莫大な利益を得る...
などと、とにかくひたすら恐ろしい場面が繰り返される。
全体を通して須藤や先生は人を笑いながら殺すなど凶悪すぎるあまり、どこか他人事のように思える存在である。
しかし、藤井の妻はどうなんだろう？？
姑を殺しさえはしていないが、殴っているし、どこかで姑が死ぬ事を期待していると告白している。
妻の告白の場面からは、人間誰しもが凶悪犯と紙一重という事を感じずにはいられないというか、人間が持つ無自覚な凶悪さを認識せずにはいられない。
また、最後の先生と藤井の面会では自分自身の凶悪を突きつけられた気分だった。
家庭問題を見て見ぬ振りし続けながら事件を追い、最後に正義をかかげ先生の死刑をのぞむ藤井を通して観客に君たちはどうなんだ？と問いかけているような感じが上手いなと思った。
自分は人並みの正義感を持ち、それなりに善良に生きていると思っていた当時の私にとってはなんとも言えない後味の悪さがあった。
長く生きていると人間のダークサイドを垣間見る事もあるし、人間って思っている以上にえげつない生き物なんだなと思う事も度々あるが、この映画をみた後は特に人間の末恐ろしさを感じ後味の悪さが続いた。
しかし、一緒に鑑賞したベテラン精神科Drの、闇の部分をみてこそ人間というものの本質がわかり生きる糧や教訓とできるという言葉を聞いてからはこの映画に後味の悪さ以外の確かな意義を感じている。
