このレビューはネタバレを含みます
パレスチナ問題では、有力なユダヤ人を多く抱えるアメリカはイスラエルを支援し、アメリカ合衆国ブッシュ元大統領は、9/11世界を変えた同時多発テロによって、多くの犠牲を払い、報復としてイラク戦争を起こし、罪なき命が多数犠牲となった。
目的が石油にあったかどうかは分からないが、それはアメリカの自らの策略によって生じた混乱と暴走に過ぎなかったわけで、アメリカの傲慢さを世界に知らしめた契機となった。
視点がどうしてもテロの被害者になってしまうこの問題は、本質がテロを起こした原因であるアメリカの行動であるにもかかわらず、犠牲者の正義を武器に、果てしなく暴走し、未だにその傷を引きずっている。
さて、この映画の中心は思春期の学生の女だ。自己中心的で自己肯定的。自業自得なのに、他人を傷つけては自分も傷をつき、少しずつ成長していくアホらしい話だが、これはアメリカそのものを表現している。
経験がないが理屈が先立ち、それでいて安易な行動を取って後悔しては二転三転させて周りを混乱させる。自分は正しいと思っていても、周りからすればただのアホだ。まさにアメリカ(ブッシュ)そのもの。
とんでもない女性蔑視だと思うのだが仕方ない。
行き過ぎた民主主義、自由主義が生み出す弊害そのものを映画として暗喩的に表現するのも自由だからだ。(だけど表現は制限される不思議な世界だ。)
さて、クズ女の取った行動はなんと、事故を起こした原因であり、しかも、嘘の証言をして混乱させたにもかかわらず、自分の罪は差し置いて加害者のバスの運転手を尋ね「あなたが悪い。責任を取らせる」という噴飯もの。自分に芯がなく、その場その場の気持ちや感情が何より大切で、だから簡単によく知らない男に股を開き、直情的に人を罵る。
この映画が如何に女性蔑視的に描かれているかと言えば、ところどころに現れる女性のちょっとした行動だ。電話をしているのに話しかけたり、クラスメイトが待っているのに教室を独占したり、すぐ怒鳴ったりする。
それでいて自分の思うとおりにならないと発狂してあちこちに噛み付く。
これは、暗喩していることからもわかるとおり、お笑いだ。
嘘をついて、その嘘を取り下げて、運転手を社会的に抹殺し、事件を起こした張本人だったはずなのに、のうのうと闊歩するという高度な笑い。
被害者の親友が言ったように、学生の女は「自分の物語と脇役」と世界を捉えている。
それはアメリカへの最大の皮肉だ。そして、パレスチナ問題や人種差別、領土問題に至るまで、言葉では決して解決しないということを知らしめている。
ここも笑いどころだ。
そして最大の笑いどころは、散々粘った訴訟は解雇なしの和解金35万ドルに収まったところだ。自分はなんの火の粉も被らず、それでいて他人を責め立てる。
すごく、スカッとする結末じゃないか。
嘘の妊娠騒動も自ら取り下げ、オペラで全然泣くシーンじゃないのに母子ともに大泣きする。お前ら…迷惑極まりない。
真面目に見てはダメだ。これはお笑いだから。