けんぼー

さよなら渓谷のけんぼーのレビュー・感想・評価

さよなら渓谷(2013年製作の映画)
3.6
2020年鑑賞172本目。
余白が多い小説のような映画。これこそ2回目見る時の感じ方が変わる。

「星の子」公開に向けて大森立嗣監督作品の予習。
レイプの加害者と被害者の関係をめぐる物語。レイプの加害者である尾崎と、被害者であるかなこ。そもそもどうしてこの二人が一緒に暮らしているのか、という疑問が物語の大きなテーマとなる。
冒頭から尾崎とかなこの二人の関係性はとても自然で、本当に加害者と被害者なのかと疑うくらい。実はそれはミスリードで、本当はそういう関係じゃありませんでしたーって流れかと思ったが、そういうわけでもない。
物語の後半で二人の今の関係性がどのようにして作られていったかが描かれる。個人的にそこからが見どころ。
単純に加害者と被害者というふうに括ることのできない、言葉では言い表せない関係性。
大森監督は、本当にこういうなんとも言えない心情を抱えた人物たちの物語を描くのが上手い。描き方として、「主要人物二人の、絶妙な沈黙を伴う会話」シーンが多い。もちろん演じる俳優の方々も素晴らしいのだが、長回しで撮ってみたり、会話のないシーンが多かったりと、観客に登場人物の心の内を想像する余白を与えていると感じた。
私の地元、新潟でロケをしており、見覚えのある街並みや道が写っていて嬉しかった。特に冬の日本海の「暗さ」や「波の荒々しさ」は加害者と被害者の二人に深い溝があるイメージをよく表していると思った。
これまた余白のある、最後の終わり方も秀逸です。

2020/10/8鑑賞