けんぼー

MONOS 猿と呼ばれし者たちのけんぼーのレビュー・感想・評価

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)
3.9
静かな音、美しい映像で魅せる少年少女たちの純粋無垢で不安定なコミュニティと残虐性。

とある国の、とある山の中で生活している「モノス(猿)」と呼ばれる少年少女たちからなるゲリラ部隊の物語。

まず印象的なのは目を奪われるほど美しい自然風景描写。
全体的に静かなシーンが前半は特に多い作品なのですが、それでもあまり退屈することなく観賞し続けられたのはこの美しい映像、ため息の出るような自然描写のおかげでもあります。

しかし、全体的に単調なわけではなく、途中で追跡シークエンスもあったりしてハラハラする部分もあるのですが、激しい濁流の中を流されていくシーンは圧巻。どうやって撮ったのか。普通にやったら危険すぎる。おそらく映画史に残るレベルの今まで見たことがないすごいシーンでした。

物語の展開としては、どう転ぶのか想像できない、行き先不明の展開。
舞台設定や状況は次第に明らかになるのですが、最後まではっきりしたことはわからないままです。語られなさ過ぎてわからない情報が多いのですが、語らないからこそ惹きつけられるものがある。そんな感じの作品でした。

「コミュニティ」についての物語でもあり、組織の末端チームであった少年少女たちが、次第に独自のコミュニティを形成していくのですが、「子供」らしい未熟な秩序の不安定さや、「子供」だからこその純粋で、無垢な残虐性にハラハラします。

そしてある登場人物のまっすぐな目がこちらを見つめるラストショットが素晴らしい。

戦争の中に生きる子供たちの純粋さ、美しさ、残虐さが胸に迫る作品でした。

2022/5/7観賞