むーしゅ

最高の人生のはじめ方のむーしゅのレビュー・感想・評価

最高の人生のはじめ方(2012年製作の映画)
3.4
 お馴染みRob Reiner監督の「最高の人生3部作」の2本目!なぜか1→3→2の順番で見ていますが、まぁ全く関係無い3本ですし、どうってことはないです(詳しくは「最高の人生の見つけ方」レビューへ)。ちなみに原題は"The Magic of Belle Isle"ですが、なぜかイギリスでは"Once More"というタイトルになっています。これも謎です。

 有名な西部劇作家であるモンテは妻の死をきっかけに酒に溺れ、創作意欲を失っていた。その状況を見かねた甥のヘンリーは、モンテを夏の間だけ湖畔の別荘で休養させる。最初は嫌々始まった生活だったが、隣人でシングルマザーのシャーロットとその3人の娘達との交流がきっかけで、モンテに変化が現れはじめる、という話。前作「最高の人生の見つけ方」に続きMorgan Freemanが続投で、生きる気力を失った老人を演じています。

 この作品は正直もったいない気がします。何だか面白くなる匂いがするのに失敗して、普通で終わってしまったような。というのも隣人シャーロットには3人の娘がおり、結果として本来であれば年齢の違う4人の女性と生きる希望を失った男との関係をそれぞれ描きわけることが出来るはずだからです。実際、母とはちょっとした恋、次女とは作家としての師弟関係、三女とは祖父と孫娘のような距離感での物語が描けています。しかし長女は完全に空気。これなら3姉妹である必要が無いくらいに全く扱われません。恐らく描くとしたら長女とは、父と年ごろの娘、あるいは母の恋人と娘、はたまたちょっと大人の色気のある男と恋にあこがれる少女、などなど色々パターンがあり得るので、下手したら一番面白いはず。ただこれにはMorgan Freemanじゃお爺さんすぎたんですよね。結果としてわんぱく子供達2人のお世話おじさんで終わっているという。これじゃ平凡なんですよ。よく見る老人と子供ムービーになってしまうんですね。

 そしてもっと残念な話が、実は上記4人の女性との関係を描くチャンスが本当はあったということです。というのもこの映画、台本段階では50代男性が主人公だったそうですが、Morgan Freemanが主役をすることになり70代に設定を変えたそうなんですね。実際監督もインタビューで「本来ならGeorge Clooneyなどが演じるはずだった」と語っています。いやこれGeorge Clooneyが正解では?George Clooneyなら長女を演じるMadeline Carrollが複雑な感情を抱いても間違いには見えないはず。ただかなり大人向けな作品には仕上がりますが。

 そんなこんなでMorgan Freemanによってびっくりするほどのどかな作品に仕上がっており、これはこれで好きな人もいるんでしょうが、個人的には本当にもったいなかった映画です。ちなみに愛犬"リンゴ"の名前の由来と、それを無視して"スポット"と名付けてしまう展開は大好きです。
むーしゅ

むーしゅ