安堵霊タラコフスキー

ホーリー・モーターズの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
5.0
初めて見たときの衝撃が未だに忘れられないオールタイムベスト

この作品のドニ・ラヴァンは一日に様々な役柄を街中で演じ分ける特殊な仕事を行なっているが、まずこの設定が素晴らしい

人間はこの社会で様々な役割を演じながら生きており、家での自分と仕事場での自分、外で遊ぶ自分は個としては同一だがその性質は全く以って違う生き物であり、その本質をこの作品は見事に表している

そしてドニ・ラヴァンの演じる役柄は本当に多種多様で、その中にはTOKYO!にも出没した怪人メルドも含まれているが、それはつまりこの作品が色々なジャンルで構成されているということであり、時にはパニック映画的で時にはミュージカルチックでと、映画を成立させる要素を多数織り交ぜているため全く飽きることがなかった

そしてシネフィルの監督らしく、この作品の中には古今東西種々雑多な映画作品のオマージュも散りばめられており、最もわかりやすいゴジラやキングコングから、ジャン・コクトーの詩人の血等、カラックスがどれだけ映画好きかを改めて確認できるものとなっていたのも実に面白く好印象だった

とにかく色んな映画の要素を楽しめ、かつ哲学的な意味も感じられるこの作品は、まさにオールタイムベストに相応しい作品で、自分の中でこの映画を超えるものが現れる可能性は極めて低い

それにしてもこんなカラックスの集大成的な映画に、ジュリエット・ビノシュが出演しなかったのは、やはり別れたときの溝が相当深かったからなのだろうか