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ホーリー・モーターズのfilmoutのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
4.4
メタ構造系ではかなり傑作。
分かりやすい物語はなくて主人公のオスカーことドニ・ラヴァンが一日の中でアポと呼ばれるシーンを演技しながらこなしていく。
全てのアポが前後と分断されており、これがアポでない部分かなと思うとそれも既に次の演技になっていたりと観客を煙に巻くような構造。
実際、最初のシーンでスクリーンを見る観客が映されていて、中盤にはインタールードまで入る。
単純にオムニバス形式と呼ぶよりも一つのコンセプトアルバムのような構造で、各々のアポことシーンが独立しているように見えた。
出演者のドニ・ラヴァンやカイリー・ミノーグ、ミシェル・ピコリらが果たして映画内の事に言及しているのか実際の彼らの事に言及しているのかすら境界線が曖昧になっている。

序盤は単純に現代的な道徳や文明を皮肉るフランス人ぽいシニシズムを感じるだけだったが、中盤のインタールードに差し掛かる頃にはすっかり時間を忘れるほどのめり込んでしまった。

ブニュエルの『自由の幻想』や寺山修司を彷彿とさせるような実験的な作品。
レオス・カラックスてこんな作風じゃなかった気がするけど。
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