甘味

狂武蔵の甘味のネタバレレビュー・内容・結末

狂武蔵(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

坂口拓という人と、この映画にまつわるエピソードを知っているかいないかで、楽しめるかどうかが大きく変わる作品だと思いました。
だからこそ、誰にでもオススメする映画ではないですが、私にとっては力が湧いてくる前向きな映画として刺さりました!!

パンフレットも面白く、久々に最初から最後まできっちり読んでしまい、パンフレット読後にもう一度観たくなっています。
坂口拓さんは本作が「生きることに悩んでいる人たちに特に届いてほしい」と言っておられて、私が映画を観ながら感じた「武蔵の戦いの中で端々に顕れる坂口拓さんの本音」が、ただの勘違いではなかったのだと分かり、より心が湧き立ちました。

この長いシーンの中、殺陣はアドリブで、何が起きてもカメラは止めるな!という指示のもと行われたという撮影、本当に命を削っているのがわかりました。
水を飲んだ時の武蔵の呟きは、坂口拓さんの本音だろうなと思ったし「どうせ死ぬんだ」というセリフ、当時の彼の状況なども含めてグッときました。

そして7年後の追加分で「何故こんなことをするのか」という問いに「ただ、やりたいだけだ」と答える…。(セリフうろ覚えですが)
自分語りですが、自分には何の才能もなくて、自分のやる事なす事全てが無駄で恥ずかしいことに感じてしまって、ずっとウジウジしていたのですが、あの死闘の後のこのやり取りで「やりたいと思ったことを私はやり通したことがあるのか?」という思いが芽生え、こんなカッコいい命の削り方を劇場でただ1300円払うだけで見せてもらえた自分は何て幸せなんだ!という前向きな気持ちになれました!
明日から色んなことを頑張れる気持ちになる、それだけでも本作を観れた価値は計り知れないです。

これから映画を観る人がいたら「ただアクションしたくて自己陶酔している姿を見せられる映画ではない。坂口拓という役者が命を削りながら闘いの中で変化していく様が有る、そしてそんな彼に影響を受け同志として手を取り合った人たちによって今ここにこの作品を観ることができるんだ」とだけは伝えたいです。

パンフレットに書いてあったのですが、7年後の小道具の刀に巻いてある「血染巻柄」は本当に血で染められているそうです。
それは『狂武蔵』の制作陣四人が、本作の復活への願いを込めて自らの血で染めたとのことで…嘘偽りのない熱い情熱を持つ業界人、そんな人たちが情熱を込めて作った作品、愛さずにはいられないです。

一つの映画、エンタメ作品としての完成度は正直あまりないので、そういう意味ではやはり人には薦めませんが…そういう意味ではスコアの点数付けにめちゃくちゃ迷いました。
あと鎖鎌使う人は、屋内じゃなくて屋外で勝負を挑むべきだったのでは…何故あんな可動域のないところで勝負に出てしまったのか…というのは凄く気になりました。
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