butasu

ペーパーボーイ 真夏の引力のbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ザック・エフロンがピンクの車を運転しているポスターのイメージから、ティーン向けのポップな恋愛映画だと勘違いしていた。実際観たらとんでもない。

まず主要キャストがマシュー・マコノヒーにニコール・キッドマンにジョン・キューザックとめちゃめちゃ豪華。真実を強く追い求める記者だが実はゲイでマゾという人に言えない性癖を持つ兄のマシュー・マコノヒー。考え足らずのアバズレビッチで40歳の魔性の女をニコール・キッドマン。キモい殺人容疑の男をジョン・キューザック。どれも配役が完璧で最高。これだけでこの映画を観て良かったと思う。ザック・エフロンも白ブリーフ一丁で頑張ってたね。

しかも話の内容もドギツイ展開の連続。こんなもん間違ってザック・エフロン目当てのティーンが観たらドン引きだろうなぁ。特にジョン・キューザック周りは本当エゲツない。面会での性的なやりとりもキツいけど、何よりもあの沼!ワニをさばいたり盗みをすることで生計を立てているあの沼一家の描写がエグすぎる。衛生観念の薄い、バニラアイスの大きな箱を家族皆で回し食べる描写のキツさといったらなかった。

黒人記者の青年をキレイに描きすぎないところにも好感を持った。何でもしないと上にのしあがれない、何故なら黒人だから、という彼の迫力が、より差別の厳しさを物語っていたと思う。

ラストは急なバッドエンド過ぎてちょっと受け入れられない。女は自業自得だからまだしも、兄が殺されるのは急だし理不尽すぎて辛かった。

あと、主人公が黒人の家政婦を心から大切に思っている感じが堪らなく好きだった。彼はやっぱり母親の呪縛から逃れられておらず、そしてさらなるトラウマによって一生逃れられないんだろうなぁと思うと、とても可哀想。あ、彼が水泳選手だったというのが伏線として効いたのには素直に感心しました。

黒人でゲイだというリー・ダニエルズの作家性がいかんなく発揮された、母親の不在に囚われた青年が体験したひと夏の出来事をハードかつ繊細に描いた作品。
butasu

butasu