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オンディーヌ 海辺の恋人のくりふのレビュー・感想・評価

オンディーヌ 海辺の恋人(2009年製作の映画)
3.5
【セルキーの化けの皮】

「ある日、寂しい漁師が海で、豊かなおっぱいのお姉さんを釣りました」

ニール・ジョーダンの新作という興味から、DVD借りてみました。

釣られた女を演じるアリシア・バックレーダさんの土着的な肉感美、漁師役、すこしスター臭が邪魔なコリン・ファレルの娘を演じるアリソン・バリーちゃんの、拗ねたように刺ある先で光る愛らしさ。アイルランドの漁村を甘蒼い画で遊ぶクリストファー・ドイルの撮影、など見所多々あれども、脚本の甘さからか燻った仕上がりなのが残念。

元々脚本家のストで制作入れず急遽、監督自身で書いた脚本とのこと。がもう一声、厳しさ含む物語にしないとちょっと夢、見過ぎかなと。そのせいか凝った撮影が、撮り方の面白さだけで浮足立って見えます。

お話は北欧伝承「アザラシ女房」をモチーフにしています。…というか、漁師と女の出会いが素っ頓狂なので、お伽噺から出てきたような女だ、と漁師は錯覚するし、秘密抱える彼女もそれを利用する、という構造。

しかしこの出会いは爆笑。お姉さんを釣るというのは比喩ではなく、ホントに釣れるんです!彼女の存在感で持ち直しますが、ヘンです!

その先の恋バナは王道ではあるし、女の素性も、方向性は予想付く。面白くなるのは、漁師の娘が加わっての不思議な三角関係からですね。

ある障害を持つ娘に、その障害ゆえにできてしまう空白時間に、漁師は「ある日、寂しい漁師が海で、豊かなおっぱ…い、いや…」と、体験をお伽噺として聞かせますが、彼女はこれに憑かれてしまう。

やはり障害ゆえのある器具で(これ巧い)、父親の尾行を始めた先で…。

で、本作の眼福はやっぱり、オンディーヌ(水の精)と名乗る女!アリシアさんは、見た目で華をまき散らすタイプじゃないですが、内側から湧くエロスの漲りを感じます (笑)。

海にも馴染んでますね。下着姿や、薄手ワンピだけで泳いじゃったりして、水から上がれば、期待通りの透けポチ美現出ですが、本作の矜持はそれを見る人物が、男ではないこと。欲望が憧れと微笑ましさに転んでいてふと爽やか。

でも本作の海は冷たいぞー、とばれちゃう所はちょっと、冷めますね。ロリータ歓喜の水浴場面があるんですが、水から出た後震えてる(笑)。

一瞬、幸福に続くかに見えた三角関係に、やっぱりひびが入ってから、漁師の行動がよくわからなくなって来て、その先はう~ん…この結末でホントにいいの?でした。人生ってこんな甘いもの?(笑)

但し、北欧のあるバンドの曲が、漁師に決定的行動を促す所があって、このバンドをよく知っていれば、伝わるかもしれない気はしました。バンド自体には興味を持ったので、CDなど聞いてみようかと思います。

あ、常連のスティーブン・レイおじさんは、いい味出してました!

ニール・ジョーダン最新作『ビザンチウム』はヴァンパイアだそうで。今さら感なきにしもですが、エロス満載ぽいので楽しみです(笑)。今度は出来が良ければ、劇場公開してほしいですね。

<2013.3.29記>
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