八月

愛のコリーダの八月のレビュー・感想・評価

愛のコリーダ(1976年製作の映画)
3.8
阿部定事件の定本人はどう感じて行動したのかは分からないから大島渚の定、として鑑賞しました
定の泥沼のような寂しさや、セックスや暴力でしか相手の気持ちを確認出来ないところがどうしようもなくいとおしくて不憫で涙が止まらなかった
わからないけど、吉蔵の放つ言葉や行動を信用できていなくて、結局は満たされていないから一生求めてしまうのかも
ポルノだと言われればそうなのかもしれないが、ソドムの市を芸術と(私個人の意見だけど)思うのと同じようにこの作品はエロティカだと思った
定と吉蔵ふたりの寝泊まりする仄暗い部屋の時間の経った体液と黴、白粉の独特のにおいまでも感じられるようだった
唯々肉欲の餌食になったとは私には思えなくて、子どものような定と其れを総て受け入れようとする吉蔵の懐の深さが垣間見えるところからすると、矢張りふたりの仲は純愛なのでは無いかと思うし、吉蔵のようなしっかりした体格の男が、定のような華奢な女のひとりの暴力を、いくら首を絞められているからとは言え止められないわけがないのだから、とおもう
定の止めど無い感情も解る気がするし、吉蔵のように其の感情たちを一心に受け止めてくれる他人が居たらなあという秘かな思いはきっと誰にでも在るから、そのふたりの関係がすごく羨ましくて、定がずるかった
八月

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