Kuuta

ミークス・カットオフのKuutaのレビュー・感想・評価

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)
4.2
一気に過去作を振り返っているが、ほんとにきちんとした監督ですね。パワー・オブ・ザ・ドッグ級の女性目線の西部劇の傑作でした。

相変わらず道に迷う、車すら失うアメリカ人の話。見えない目的地、変わらない景色、暗すぎる夜が「開けているようでどこにも行けない」アメリカの静かな絶望を浮かび上がらせている。

川の前で座り込み、どちらに向かうか話し合う男たちの背中を見つめるショット。会話だけが宙に浮いた八方塞がりの関係は、女たちが同一ショット内で水をシェアするのとは対照的。エミリー(ミシェル・ウィリアムズ)が先住民に水を手渡す時は、引きのショットで小さくも確実に繋がっている。

男性性を背負うミークをリーダーに、荒地を歩き続ける移民団。水平な行軍に不和を生み出すのは、高台から彼らを見下ろす先住民の視線であり、エミリーだけが早々にその存在に気付くが、遠すぎて切り返しは成立しない。靴の裁縫の場面でエミリーは自ら歩み寄り、屈み、先住民と目線を合わせている。

ようやく辿り着いた斜面が、集団のヒエラルキーを崩壊させ、ラストで先住民とエミリーは切り返しで結ばれる。木の枝のフレーム越しという留保付きとはいえ、新たな水平の関係が構築される。

右か左に彷徨った男たちと異なり、生き延びた先住民は画面奥へと荒野を切り開く。白人男性の背中の限界を別角度から乗り越えるこの映画は、フォードが「捜索者」で引いた道をしっかりと拡張している。84点。
Kuuta

Kuuta