くりふ

バトル・オブ・シリコンバレーのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【りんごの芽が出て膨らむまで】

ジョブズさんが亡くなる随分前に、TSUTAYA発掘良品で見つけたんですが、『ソーシャル・ネットワーク』公開時の便乗リリースだったのでしょうね。で、便乗してみたら(笑)、その価値はありました。

パソコン開発の黎明期、MACの父スティーブ・ジョブズと、Windowsの父ビル・ゲイツ、若き日の闘いと変遷を描いたTVムービー。

日本では、WOWWOWで放映されたらしいですね。特に良くできたドラマとは思いませんでしたが、この二人史については、あまり知らなかったもので、その意味で面白く、ベンキョになったのでした。

中島みゆきでなくマイ・ウェイが流れるプロジェクトXとも言えます(笑)。知的好奇心をつまみ食いレベルで満たしつつ、お手軽に楽しめました。但し、史実はかなり加工しているようですが。

いきなり、リドリー・スコットさん(役)が登場するので驚きましたが、アップル社のあの『1984』風CMの撮影から語り始めてるんですね。興味深い導入でしたが、ハンマー投げお姉さんの露出が足りない!(笑)。

ジョブズの傍若無人ぶりと、ゲイツの猪突猛進ぶりが興味深いところでした。『ソーシャル・ネットワーク』でのザックが、やな奴と評判になりましたが、ジョブズの方が全然ひどかったです。明らかに他人を弄んでますからね。

彼は生まれてすぐ里子に出され、実の親を知らない時期があったそうですが、企業トップという、他人をコントロールできる位置に立った時、疎外された幼年期への復讐を始めたか…なんて解釈したくもなりましたが、やられる側はたまったもんじゃありませんわね。なかなか鬼畜でしたよ(笑)。

ゲイツは策士なんですね。IBMに、まだ存在しない某画期的システムを、売っちゃってから準備に奔走するとか、なかなかのサスペンスでした(笑)。

マイクロソフトって、おんぼろモーテルの一室で創業したんですかー。隣の部屋では娼婦が創業していて、漏れる業務音に頭を抱えるゲイツの図、なんて微笑ましかったです。サタデーナイトフィバるゲイツ、も笑えました。

個人的に一番興味を惹かれたのは、アップルでのGUI誕生の辺りです。ゼロックスの研究所で生まれたそれを、ジョブズが巧くパクっ(ピーッ)すね。後に関連して、アップルとマイクロソフト間である大問題が起こりますが、GUIのエピソードから原題とも絡め、ドラマらしい巧さで盛り上げてました。

ちなみに原題は『Pirates of Silicon Valley』。さてジョブズとゲイツは、クリエイターなのか? 強奪する海賊なのか?

便乗リリースなので、『ソーシャル・ネットワーク』と比べてしまいますが

、・創業者の非常識な行動
・事業拡大に伴う仲間割れ
・盗作騒動

…という3点セットが、まったく同じように出てくるのが面白かったですね。

1999年の作。ジョブズは本格復活前なので、少し寂しい結末となってます。あとMS社スティーブ・ボールマーのハゲヅラがものすごう安いつくりで、ドリフのコントみたいでした。ちなみに、西和彦さんは出てきませんね。

そのうち、ジョブズ全生涯を描く作品も出てくるのでしょうね。本作と比較すれば、また違った面白さが見えてくるのでしょう、きっと。

<2011.11.14記>
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