ブタブタ

人魚伝説のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

人魚伝説(1984年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

原作は漫画(劇画)で作者は宮谷一彦(みややかずひこ)先生。
何年か前クイックジャパンから「ふくしま政美」などカルト漫画作品が次々と復刻されてその中にこの作者の作品『肉弾時代』があり宮谷先生の存在を知りファンになったのですが。

『肉弾時代』は世界的な作家〝M〟(明らかに三島由紀夫)がパンチドランカーになってしまったボクサーと世界最強と呼ばれる元チャンピオンとの試合をプロデュースするのと並行して226を彷彿とさせるクーデターを起こす話で、国家権力VS個人、エキセントリックなアウトローの主人公は『人魚伝説』も同様で、また〝M〟の周りの女性の衣装などエロスと過剰なまでの暴力描写も共通していて今ではその作品を殆ど見る事が出来ないのが残念です。

昔、真夜中に起きた時TVをつけたらこの映画のクライマックス、土砂降りの雨の中で銛で人間を殺しまくる返り血で真っ赤に染まった女性が映ってて何事かと思って食い入る様に最後まで見た後、長らくこの映画が何なのか分からなかったのですが大分たってから『人魚伝説』のタイトルの作品だとわかりました。

ひと言で表せば「あまちゃんマッドマックス(1作目)」
仲良く慎ましく幸せに暮らしていた地方の海の漁師と海女の夫婦。
それがリゾート開発と原発建設計画によりその反対・調査活動に立ち上がった夫は無残に殺され妻・みぎわ(白都真理)がその復讐を開始するというストーリーですが、とにかく殺して殺して殺しまくる。
敵を探る為に近付いた男との情事の後で包丁で滅多刺し。
殺しに来た男も返り討ち。
通りがかりの関係ない人まで殺す。
とにかくみぎわの美しさと銛をもったら殆ど座頭市かと言うくらい有り得ない程の強さ。
死装束を思わせる白の海女さん潜水着で原発誘致のパーティーに乗り込んで行って刺して刺して刺しまくって白い服を返り血で真っ赤に染めて全員皆殺し。
大量のパトカーがサイレン鳴らしながらやって来たのを見て「まだ殺さなきゃならないの?」とニヤリと笑う。
ここで突然暴風雨が巻き起こり警官隊を薙ぎ倒す。
みぎわは人間を超えてこの時既に人外の存在と化しているのでしょう。
そしてラスト、海からみぎわが顔を出すと何故か死んだ筈の夫が居て其処は何も無かったのか如く以前の穏やかな幸せな世界。
それはみぎわが見た一瞬の夢だったのかもしれないし、もうあの世なのかも知れませんがそれまでの血みどろの地獄絵図とは打って変わった海の中のあまりに美しい幻想的な光景と相まって全てが終わった静寂とみぎわの魂が浄化された様な、そこは涅槃か煉獄か天国なのかわかりませんがみぎわに「救い」が訪れた、悲しくも美しい結末でした。
ブタブタ

ブタブタ