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静かなる叫びの教授のレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
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犯罪者=モントリオール理工科大学の銃乱射事件の容疑者。の犯罪の動機は「フェミニズム」への批判という名の「男権主義」の衰退の恐怖。
「強い男」に憧れるジワジワと底辺を這う憎悪の滾り。
その表情と鬱屈を追いつつ、映画は反対の面も掬い取る。

被害者のひとり、ヴァレリーは理工系の大学から「機械工学」を活かした就職先を探しつつその「男権主義」的な風潮にストレスを抱えている…という描写。
犯人である男は髭を剃り、被害者の女性はスネ毛を剃っていたり…という性差の描写の妙は、実に映画的。
そして…他者への事情を鑑みない、想像し得ないところで憎悪が爆発していく悲劇。

冷徹なモノクロ画面と、しんしんと降る雪景色。キャンパスの広さと無機質さという閉鎖空間描写も冴えていて緊張感を感じさせ、空間設計と撮影、作劇と演出のディテールが細かくて素晴らしい。

そして事件によってもたらされる顛末。
そして事件自体の傷、以上にさらに記憶に残り続ける呪いたち。
全てを容赦なく淡々と描写しながらも、脈々と進行していく現実と、そこに気持ちが追いつかないからこそモヤモヤと残り続けていく記憶。

小さな小さな映画、小さな小さな物語なのに奥行きがあり、後味がしっかり悪いが実話としての悲劇性をきちんと映画にまで高めた手腕が見事。
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