このレビューはネタバレを含みます
なんか気持ち悪い…。
感動させよう、泣かせようという制作側の魂胆が丸見え。日本映画の悪いところがモロに出てる。
「ほら若くして死んじゃうんだよ?」
「本人は反戦なのにそれでも行くんだよ?」
「奥さんを愛しているのに、子供に会いたいのに行くんだよ?」
「ね?悲しいよね?泣けるよね?」
という広告代理店の薄寒い泣いてくださいアピールがウザいほどある。
マスコミ=悪、戦争を知らない能天気な若者=悪という勧善懲悪にも辟易。特に後者は気持ち悪さの極致。
羽振りの良さそうな若手エリートサラリーマンが、六本木あたりの高級レストランで、かわいい女の子達と合コンしながら特攻隊をディスるってどんなシチュエーションだよ…。
チャラい、エリート、お金持ち、おまけに特攻隊ディスというバカでも分かるようにこれでもか詰め込まれたコイツ悪い奴ですよ演出に胸焼けがする。
しかもそいつと特攻隊の議論になり、いきなり大声出してブチ切れ、金を叩きつけて帰るって…主人公も普通に考えてヤバい奴でしょ…。そりゃ友達もドン引きするわ…。
てか主人公自身も、ついこの間までどちらかと言えばキレられる側の人間だったのに、それを棚に上げて大声出せるなんて情緒不安定なのかコイツは?
このシーンは特攻隊を調べているって話になった後、周りが全く興味を示さず、無関心な態度であることに主人公が絶望する場面にするべきだった。
なぜなら、友人達の無関心な態度が、ついこの間までの自分自身の姿と重なるからだ。
「何も知らないかよ!」と責めたいけど、自分もそうだったから責められない。
特攻隊の悪口も言わないかわりに、「そんな事は昔の話」と平和を謳歌し、資本主義的な快楽にふけり、歴史を忘れていく友人達を前に己の無力さに絶望するシーンにしなくては何の意味も無い。
そしてそれは休日だから友達やカップルで映画館に来たという観客に対しても鋭く突きつけられる。無関心な友人達の姿は、映画を見る前の観客達の姿でもあるのだと。
そして主人公と観客が感じている虚しさやコイツらに言っても無駄だと感じる無力さは、実際に特攻隊に関わっていた人が苛まれてきた苦悩と一緒という事を提示するのだ。
その後、抱えきれない絶望と行き場のない現代への不満を抱えてヤクザの家に行くと言うなら話の辻褄も合うだろう。
子供のように自分の無関心だった過去を棚に上げて、何も知らない友人に大声を張り上げる主人公に共感など微塵もできない。
歩道橋の上を零戦が飛んでいくシーンもチープすぎて噴飯物。笑わせようとしてるんですかね、このシーン?
さらに問題なのが日本の戦争映画がやりがちな「僕は負けること分かってます」発言を連発させている事。
「こんな戦争負ける」的な発言を主人公が言う
↓
上官あたりがそれを聞きつける(なぜか聞こえるところで言う)
↓
「臆病風に吹かれたか!!」と上官が激怒し理不尽な暴力をふるう
もうお馴染みのパターンすぎて手垢まみれの手法なのにまだ使ってるなぁと…。しかも今作はそれを露骨に繰り返すから呆れる。
とまぁ、日本の戦争映画の問題点を露呈した作品という印象。
作品としていいところが全くないわけではないが、過剰な感動演出がありすぎてどっちらけ。
あと、原作者は反戦映画と言っているらしいが、これは反戦映画ではない。戦争メロドラマ映画。
まぁ、どうしても今日は自分の愛国心をたかぶらせたい!という日には良いのかも。
いずれにしても、戦後70年以上経って、あの戦争を未だに感動ポルノとして消費し続けている我々が一番糾弾されて然るべきなのではないかと思うね。