Kuuta

永遠の0のKuutaのレビュー・感想・評価

永遠の0(2013年製作の映画)
2.6
山崎貴と向き合う⑤

全然ダメ。

「アルキメデスの大戦」は最悪の状況に向かうドラマをブラックコメディに近い形で描いていた。間の抜けた撮影、脚本、編集が、悪夢的イメージを増強しており、山崎貴の映像が良い方向に機能していた。

同じ戦時中の今作もいけるか…?と思ったが、こちらはダメな映像で真面目な話を語ろうとしており、ほぼ上滑りしている。

ずっと誰かが何かを説明している。画面を見なくてもセリフで内容がわかるTVドラマのような作り。演者が黙る場面になると「雨の中で書類を広げて立ち尽くす」ような演出でフォローを欠かさない。

宮部が特攻に向かう姿を大石目線で見送るショット、零戦がフレームアウトする前に、ぼんやりと暗転する。戦闘機のフレームアウトによって「映画の外にある現実を生きる」ことを描いた、トップガンマーヴェリックのラストショットを思い出しつつ、やはりぬるいなぁと思わずにはいられなかった。

また、これは今のところ5作品全てに共通しているのだが、「街の日常」を描くために主役と無関係なエキストラを歩かせたり、すれ違わせたりする、記号的かつ適当な演出が気になる。

歩く演者をどう撮るのか、カメラをどこに置き、何を撮らないのか、いろんな頭を捻った上で、映像の力で物語を伝えるのが映画監督の仕事だろう。仕事が少し雑ではないだろうか。
(井上真央が夜の川沿いで泣き崩れる場面だけは、山崎貴の溝口健二への愛がストレートに出ている。戦地の宮部と大石が川で休むシーン、彼らは井上真央と反対の彼岸にいる)

今回ちょっと雇われ仕事感はあって、原作の「わかりやすい話盛り合わせ」をセリフ主体に淡々と映像化している印象だった。いずれにせよ、かなりガッカリな出来でした。
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