平田一

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官の平田一のネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

元々140分で、ショーン・ペンがカメオ出演していることを聞いていて、米版予告を見ていた時からスゴく注目してました(実際には大分カットで、ペンもカットされたとか)。

自己不在の多数決に依存している一般人、病的レベルで少数意見を黙殺させてく司法機関…見ていて不快でいっぱいだけど、分からなくもないのが辛い。『リチャード・ジュエル』もプロファイリングは"可能性"にすぎないのに、確実な証拠だって大人数が勝手に妄想、あまつさえ疑われた人間を狂わせても一切の責任取らず、どうなろうと他人行儀。国の司法機関様がとんだ職務放棄だよ。

にしても17年の"Me too"を知っているから、コールの手口がワインスタインの手口に似ていて何とも…前にアーシア・アルジェントがその時の体験談を『スカーレット・ディーバ』として自ら監督・主演して発表していたわけだから、言葉にしにくいものがある。ワインスタインの被害者だったアシュレイ・ジャッドが出ていることも何というか迷惑だろうが、そこがどうも気になって…。

と、色々書いたが、映画自体は嫌ってない。むしろ二回も映画館で観ていたぐらいに大好きだ(片道2時間半かけた)。

『バベル』や『クラッシュ』、『大いなる陰謀』と同レベルの素晴らしい群像劇で、ハリソン・フォードもスゴく良い。

控えるところはしっかり控え、出てくるときはしっかり出る(かといってスター性を放出させない巧みさアリ)。こんなにも控えられるスターというのは素晴らしい(この場合は役者って言った方がいいのかも…)。ヒーローになれないところも人間臭くてスゴく良い。

個人的にオススメなのはクリフ・カーティフ演じるハミード、サマー・ビシル演じる少女タズリマの物語。前者は帰化した(ICE)捜査官、マックス・ブローガン(ハリソン・フォード)の相棒。家族の間で板挟み、一人苦しむ人間が深夜のコンビニ強盗である人間を救う。罪を犯した人間が、罪を犯す前に救う。それが相手の生き方や視点を変えることになる。静かですがエモーショナルで、とても見事な場面です。

後者は"言論の自由"が聞いて呆れる場面です。9・11でアメリカは変わったのかもしれないけれど、人間性さえ変わっちまったら、後には廃墟が残るだけ。守るために切り捨てるのがまかり通りすぎる様…そこに希望を見出だすなんて、どうしたって出来ないよ…そういった疑問点を伝えているのがボクは好きで、だからこそDVDを未だに残しているんでしょうね。

ワインスタインが強行させたカット場面も気になるし、ペンがどんな役だったか、そこも非常に気になるが、映画自体は同テーマの『扉をたたく人』同様、とても考えさせられます。

マーク・アイシャムの曲も良し!

追記:日本版の予告編のナレーション、小山力也さんかな?

あとマハシャーラ・アリ(『グリーンブック』)やジョシュ・ギャッド(『アナと雪の女王』)、リジー・キャプラン(『クローバーフィールド/HAKAISHA』)がちょろっと出てるので、そこも是非ともご注目。
平田一

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