アキラナウェイ

ヒットマンズ・レクイエムのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ヒットマンズ・レクイエム(2008年製作の映画)
4.2
「スリー・ビルボード」に続き、「イニシェリン島の精霊」もすこぶる良かったので、マーティン・マクドナー監督×コリン・ファレル×ブレンダン・グリーソンのトリオによる2008年公開のこちらを鑑賞。

アイルランド出身の殺し屋レイ(コリン・ファレル)とケン(ブレンダン・グリーソン)が、ベルギーのブルージュを訪れる。ボスのハリー(レイフ・ファインズ)からの指示を待つ事になった2人は時間を持て余し、レイはクロエ(クレマンス・ポエジー)という女性に一目惚れ。一方、ケンには「レイを殺せ」というハリーからの非情な命令が—— 。

ロンドンでの仕事で、重大なミスを犯してしまったレイ。その罪悪感に苛まれつつも、クロエとの出会いに浮かれ気味。まだ殺し屋として未熟さが残るレイ。

レイより年上でいつだって冷静沈着、理性的に物事を捉え、ブルージュという街に歴史的に魅せられるケン。

対照的な2人の殺し屋をコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンが見事に演じ、彼らの絶妙に噛み合わない会話が実に可笑しく、この2人のヒットマンの関係性は「イニシェリン島の精霊」にも通じる所。

前半はボスであるハリーからの指令を待つ、暇を持て余した殺し屋達をゆるりと楽しむ喜劇であり、後半はハリーが自らブルージュに乗り込んでくる事で悲劇へと転じていく様がスリリング。

何事にも筋を通す男、ケンの壮絶な末路。

古き街並みの景観や霧が立ち込める運河。ベルギーのブルージュという街を"おとぎの国"と称し、その舞台に相応しいラストシーン。映画の撮影現場で異形のモノに仮装した演者達で迎える終盤が、何とも幻想的。

殺しを生業(なりわい)にしながらも、子供を殺めてしまった事に激しく動揺するレイや、相棒を殺すとなるとやはりそうは簡単にいかず躊躇するケン。

殺し屋と呼ぶにはあまりに人間臭い彼らの事が堪らなく愛しくなる。

人物描写に余念がなく、愛憎が交錯していく中で大きなうねりを生み出し、終盤を盛り上げる構成。マーティン・マクドナー監督作品は好き。