みどり

わたしはロランスのみどりのネタバレレビュー・内容・結末

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

2021/4/19

はじめは髪の毛だった
長い髪を触る女の人が羨ましい
そのうち服にも目がいって
黙っているのも苦しくなって

女になりたいの、と
ロランスは恋人のフレッドに打ち明ける


いままで男として生きてきたのに
突然愛する人にそう告げられたならば
私はどこまで受け入れられるのだろうか
見終わってからずっと考えている

戸惑って離れようとしたけれど
それ以上にロランスのことが気になり
なんとかしてあげたいと思った

一方でロランスは正直に
ありのままの自分でいたくて
服装や髪型を変えてみただけ
たったそれだけで何も変わらないのに
周りの人の目は分かりやすく
時に痛々しくこちらを見つめる
まるで変なものでも見たような目で


ロランスが一歩踏み出したことは大きな変化だけれど
信頼している人たちや母に理解してもらうことはとても難しい
自分が思ってた以上につらい現実だったから
受け止められなくて苦しくて
それでも自分の気持ちは曲げたくなくて
わがままなようにも見えるかもしれない
フレッドが可哀想に思えるかもしれない

どちらの気持ちも言い分も決して間違ってはいない
ふたりがスペシャルな関係だったことは紛れもない事実


息子だと思わない
娘だと思ってる


なかなか自分を理解してくれなかった母からの言葉が胸に響いている
スペシャルな関係、は
ロランスとフレッドだけに限らず
親子の関係にも言えるような気がする


近くで支え合うことだけが愛じゃない
離れていても想い合っている
フレッドが不意にこぼした
息子より愛してる の言葉


ふたりの再会は
きっと言葉では表せないさまざまな気持ちがあったと思う
たくさんの洋服が舞う仕掛けや
ありったけの水が流れ落ちたり
前が見えないほど強い風に巻き込まれる落ち葉たち



愛とは
そして人を愛することとは
愛についてここまで真剣に考えたことってそうそうないかもしれない


独特の表現になっているような気もするけれど
まったく違和感を感じさせない抜群のセンスと音楽の使い方
監督と同じ時代を生きていることにただただ感謝
みどり

みどり