佐藤でした

わたしはロランスの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
5.0
国語教師のロランスは35歳の誕生日を機に、性同一性障害であることを恋人フレッドに告白。フレッドはこれまでの日々をすべて否定されたような気がして激高するも、彼の一番の理解者になることを決める‥。

16:9のサイズに慣れていると、4:3にするだけで、ぐっと古さが増す。舞台は1980年代後半〜90年代。この時代設定は「性に対する偏見がなくなり、何もかもが許される現代。その少し手前の時代において、“最後のタブー”に触れた」と監督はインタビューで話している。

映画全体にずっと流れている、ほんのりと重い緊張感みたいなものを、一度もぷっつりと切ることのない丁寧な作りに改めて感心。音や画の大胆な切り替えを好んで使っているにも関わらず、だ。

濃厚なラブシーンも、拳銃も、ドラッグも出てこない。彼のビジュアルセンスが何よりも辛辣で美しい。

ストーリーがどこに飛んでも、ありふれた場所には着地せず、男でもなく女でもなく「人を愛す」という究極的なメッセージを残してくれる。

グザヴィエ・ドランには、この世はどんなふうに見えているのか。もっと知りたくなった。

(2014.10.3)


(2014.7.29)
佐藤でした

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