暮色涼風

わたしはロランスの暮色涼風のネタバレレビュー・内容・結末

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ライティングのこだわりが凄い。色と影で沢山遊びがある綺麗な映像。
ホコリを光で見せたり、夜の雨の中を原色の光で照らして雰囲気を作り出す照明の演出が好き。

部屋や廊下の消失点をフレームの真ん中で捉える構図が、まるで箱の中の生活を覗いているようで面白い効果を生んでいる。手前を暗くしているところは偽りの順調に見える生活だったり、自分を受け入れてくれるか心配な主人公と周囲の人間の気まずい空間だったり、鮮やかに見せているところは変化した生活だったり。観客によっても、このシンメトリーの様式美を多用したカットにどんな印象を持つのか、また違ってくるだろう。面白い演出だった。

テンポも良かった。ある場所に人物が立っていると思ったら、次のカットですでに近くに移動しているなど、移動のために歩いているところは写さない基本的なモンタージュを多用することで、そのテンポの良さを作っている。

音楽も、ベートーヴェンやサティの曲をアレンジしたものが良いところで使われていて、映画館の環境で観たかったくらい良かった。

ただ、日本語字幕の「確信犯だったのね」という言葉は誤用だった。

最後の台詞「とにかく、私はロランスだ」がいい締めくくり。

オカマ映画の中では『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』と『プリシラ』に並ぶ面白さだった。
暮色涼風

暮色涼風