風の旅人

わたしはロランスの風の旅人のレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
3.5
高校教師のロランス(メルヴィル・プポー)は35歳の誕生日を機に、恋人のフレッド(スザンヌ・クレマン)に「女になりたい」と告白する。
フレッドはこれまでの二人の時間を否定されたような気がして憤るが、やがてロランスの苦悩を理解し、協力者になる決意を固める。
フレッドのアドバイスを受けたロランスは、化粧と女装をして登校する。
しかし社会はロランスを受け容れず、フレッドはノイローゼに、ロランスも学校をクビになり、二人は別れる。
六年後、作家として成功したロランスはフレッドに再会する。

レストランでロランスは他の客に好奇の眼差しを向けられ、ウェイトレスから好奇の質問をされる。
それをフレッドが一喝するシーンに、フレッドのロランスに対する愛情の深さを感じた。
このシーンを合図に、映像表現が写実的なものから夢想的なものへと切り替わる(口から出る蝶、滝のように降り注ぐ水、天から降ってくる洗濯物)。
まるで「普通」という制度に抗うかのように。

男女の境界、「普通」という枠組は誰が決めるのだろうか。
なぜ男がスカートやヒールを履くことは「異端」とされるのか。
性的マイノリティへの無理解、差別的な視線に晒されながら、ロランスは自分らしく懸命に生きる。
そんなロランスを必死に支えようとするフレッド。
二人は唯一無二の「スペシャル」な関係を築いた。
たとえそれが最後には破綻するとしても。
トランスジェンダーというマイノリティを取り上げながら、この映画は普遍的な愛の物語に仕上がっている。
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