おとうふ

危険なプロットのおとうふのレビュー・感想・評価

危険なプロット(2012年製作の映画)
4.5
エステェェル………
全体を通してどうしようもなくこの映画に惹き込まれてしまう要因の一つは彼のナレーションだろう。
観てからずっと私の頭では彼の呼ぶ「エステル」がこだましている。
滑らかでテンポがよく、耳心地の良い声。
思ったのは、このクロード少年には、何か夢中になれること、それを全力で一緒にやってくれる大人(先生)の存在がすごく重要であったということ。
彼の行動はスリリングではあるんだけれど、理屈は通っている。
不在の母に、要介護の無職の父。
強烈なマザーコンプレックスと、ヤングケアラーであること
普通の家庭が彼の目には楽園に写る。
彼がラファのことを"みんなと違って普通"という理由で近づいたが、皆が普通惹かれるのは"みんなと違って特別"な存在だろう。
あまり"普通の"とか言うと今度は"普通"といったいはなんだ?と疑問が生まれるわけで、その通りで、"普通"はすごく難しく極めて珍しいのである。
"特別"よりも"普通"の方が希少価値が高く、彼のマニアック性をそそった。
中産階級の女の匂いや、布巾を手に駆け寄る母親や、バスケを観ながらピザを食べる父と息子、ルールを理解していない母親、それらが全て"一般家庭的"要素として彼の中で加点されていく。一般家庭フェチ、みたいな。
そして選ばれたのがラファ家であった。
取り入り方が、本当に上手。
イヤリングに気をそらせ、身の上話をし、ぬるっと心に入っていく。
脱がせず、人を殺さず、心理戦一本勝負という感じですごく見応えがあった。
はじめてサスペンスを面白いと感じられた貴重な作品。
ちなみに先生とその奥さんはウディ・アレン&ダイアン・キートン夫妻をモデルにしているそう!
これがすごぉぉくよかった!
オゾン監督の作品って独特のピリついた空気があって、気が抜けないというか、ユーモアを無理に入れようとしたらNHKで観るお笑いくらい寒いなって思ってたが、この夫妻のキャラクターはいい感じにマッチしていてオゾン監督の作品の雰囲気をそのままユーモアも入って観やすかった。

雑記:ここ最近の私、映画ハッピーボーナス期間に入ったらしく、約5年以上続いた映画スランプを抜け、なんだか普通に楽しめる様になっているので、このチャンスを逃すまいと観れる時に観ている。
これは良い兆候なのかもしれないし、ただの気まぐれなのかもしれない。
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